2022.10.19
TSMC熊本進出の発表から約2年―TSMC関連ニュース(2023年8月)
こんにちは。リージョナルキャリア熊本のコンサルタント、田尻です。
2021年10月14日に半導体受託生産最大手のTSMCが日本に半導体の新工場を建設すると発表してから、約2年が経過します。
22年10月13日にTSMCが発表した2022年7~9月期決算は売上高が6,131億台湾元(約2兆8千億円)、純利益が2,808億台湾元と、四半期で過去最高となっており、半導体部門の売上高では世界トップになったとみられています。
また、22年10月16日には西村康稔経済産業大臣も来熊し、TSMCの新工場や隣接するソニーグループの画像センサー工場などの現地を視察、蒲島知事や県内の教育機関と意見交換を行いました。
大臣は、現在課題となっている半導体専門人材の育成を支援する考えを示していますが、早速県内の大学でも半導体関連の学科が新設されるなど、具体的な動きが加速しています。
今回は、熊本でも日々注目されているTSMC関連の最近のニュースについてまとめています。
<目次>
- ● 工場の建設状況
- ● 半導体関連企業の動き
- ● 採用状況
- ● 人材育成・教育機関
- ● お役立ち情報(U・Iターン相談会)
工場の建設状況
TSMCの新工場は2022年4月に着工、2023年9月に竣工予定で工事が進められています。
建設開始当初は数多くのクレーンがそびえ立っており(写真1)、少し離れた場所からも一目で場所が分かる状況でした。
現在(写真2)は既に外観は出来上がっており、工場内では台湾研修から戻ってきた人たちが働いています。完全な事務所の引っ越しはまだ先のようですが、着々と進められています。
※写真1(筆者撮影)
※写真2(筆者撮影)
工場は地下2階・地上4階建ての鉄骨鉄筋コンクリート造りで、その他オフィス棟なども建設予定です。
通常は2~3年かかる工期を大幅に短縮して建設が進められており、現在は基礎工事が完了、構造部分の工事中ということで、工事は順調に進んでいる模様です。
2024年12月には生産スタートの計画です。
半導体関連企業の動き
九州各県でもデジタル化の進展や電気自動車(EV)の普及などで、長期的な成長が見込まれるため、半導体関連の大型投資の動きが見られています。
|九州各県の動き
- ・ソニーグループ株式会社(東京都):画像センサー工場(長崎県諫早市)を相次ぎ増強
- ・ローム株式会社(京都市):パワー半導体工場(福岡県筑後市)の新棟を12月に本格稼働予定
- ・三菱電機株式会社(東京都):パワー半導体の開発試作棟(福岡市)を9月から順次稼働
- ・株式会社SUMCO(東京都):工場(佐賀県伊万里市)を増設、23年下期から生産開始予定
熊本県内ではTSMC進出に伴い、関連企業の進出や設備増強が相次いでいます。2022年の誘致企業の立地件数も過去最高だった昨年を上回るペースで推移しているようです。
TSMC新工場を建設中の菊陽町周辺では土地需要が高まり地価が上昇、先日のブログでも取り上げていますが上昇率が全国1位となっています。
また、10年間での熊本への経済効果は4兆円超と推測されています。
|熊本県内の動き(※最近の一部)
- ・富士フイルム株式会社(東京都):国内初の生産拠点となる「CMPスラリー」の生産設備を菊陽町の工場に導入予定、24年1月から操業
- ・株式会社JCU(東京都):薬品の研究開発や製造拠点開設、くまもと臨空テクノパーク(益城町)に進出
- ・日本マーテック(名古屋市):台湾分析大手の日本法人、熊本市に事業所進出
- ・NRS株式会社(東京都 旧社名/日陸):物流、化学品などの倉庫を大津町に新設
▼その他の誘致企業の新着情報は、熊本県「熊本企業立地ガイド/新着情報」をご覧ください。
新着情報 / 企業立地ガイド熊本
▼企業誘致などに関しては過去のブログでもご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
【熊本UIターンブログVol.8】TSMCの工場建設に伴う熊本県内の企業誘致に関して
TSMC進出による熊本への経済効果10年で4兆円、菊陽町の時価上昇率全国トップ
採用状況
新工場の雇用に関しては、TSMCやソニーグループからの出向者を含め約1,700人の採用計画があります。2023年4月には100名以上の新卒が入社、2024年4月にも同等以上の新卒採用が計画されており、地元企業では人材の争奪が懸念されています。
新卒と中途の経験者を2年かけて700人程度採用し、新卒と中途の比率は半々になるようです。
22年7月以降は選考が続々と進み、内定・入社の方も出ています。また、リーダークラスの採用が充足したポジションに関しては、アシスタントクラスの採用も出てきました。
少しずつ要件が緩和され、異なるレイヤーのポジションが出てきたりと、まだまだ求人ニーズは高まりそうです。
また、TSMC進出を見据えた半導体関連企業の新設・増設などにより、関連企業含め採用活動は活況が続いている状況です。
▼JASMの求人はこちらのブログにまとめています。ぜひご覧ください。
TSMCの合弁会社「Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(JASM)」の求人まとめ
人材育成・教育機関
課題とされている技術者の育成も、県内の教育機関等で新たな取り組みが始まっています。
|熊本大学・熊本県立大学・東海大学
熊本大学は2024年度に学部相当の「情報基盤融合学環(仮称)」を新設し、半導体プロセス制御コースを設ける方針です。工学部に半導体教育課程も設け、2031年度には現在の2倍の140人の専門人材を地域企業に輩出する目標を掲げています。
また、熊本大学と熊本県立大学、東海大学は地域のDX人材の育成を目的に連携し、大学間を越えて関連科目の履修が可能となることを発表。運営形態が異なる国・公・私立の大学による科目の連携は全国初となっており、大学の教育資源を連携・有効活用し、グローバルDX人材育成の強化を図ります。
※参照:熊本大学HP「文部科学省 令和4年度大学教育再生戦略推進費「地域活性化人材育成事業~SPARC~」に採択」
|熊本県立技術短期大学校
熊本県立技術短期大学校は2024年4月に半導体の新学科を開設する方針で、新たに機器を導入する計画も。また、国会で「同特区内の一定の要件を満たした職業能力短期大学校の修了者は、当該区域内の大学に編入できる」という特例措置が設けられ、次年度の入学生から熊本大学への編入という選択肢も可能になるようです。
※参照:熊本県立技術短期大学HP「半導体技術科の新設(令和6年(2024年)4月)及び半導体人材の育成について」
お役立ち情報
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熊本出身・在住のコンサルタントが、転職についてのご意向やご希望の求人をお聞きしながら、転職の成功に向けて適切な情報をご提供させていただきます。
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