2023.08.22
世界に誇る東北大学の材料研究-数々の発明品から現在行われているスゴイ研究まで一挙にご紹介
こんにちは。リージョナルキャリア宮城のコンサルタント、佐藤理貴です。
過去に何度か東北大学に関しての記事を書きましたが、今回は東北大学が世界に誇る「材料(マテリアル)研究」について紹介させていただきます。
世界から注目される東北大学
東北大学は、イギリスのTimes誌の別冊「Times Higer Education」が、日本の大学における「教育力」に焦点を当てて評価した『THE 日本大学ランキング2023』で、4年連続となる1位を獲得しました。
また同大は、昨年から公募が開始された文部科学省の「国際卓越研究大学制度」(※)において、昨年度末までに申請のあった国内10大学の中から初の認定候補となるなど、国内外からの注目度が高い大学です。
(※)「国際卓越研究大学制度」について
「近年、諸外国のトップレベルの研究大学が豊富な資金を背景として研究力を高めているのに対し、我が国の大学は研究論文の質・量ともに低調な状況にあります。(中略)このため、国際的に卓越した研究の展開及び経済社会に変化をもたらす研究成果の活用が相当程度見込まれる大学を国際卓越研究大学として認定し、当該大学が作成する国際卓越研究大学研究等体制強化計画に対して、大学ファンドによる助成を実施します」
(引用元:文部科学省HP/国際卓越研究大学制度について)
▲東北大学片平キャンパスのランドマーク、エクステンション教育研究棟(以下、写真は同キャンパス内にて筆者撮影)
東北大学の材料研究について
東北大学は1907(明治40)年、日本で3番目の国立大学・東北帝国大学として創設されました。現在は10学部、16の院研究科(インターネットスクール含む)、3の専門職大学院、6の付属研究所を持ち、約17,000人の学生数を擁する世界有数の総合大学となっています。
その中でも東北大学は「材料(マテリアル)研究」においては特に卓越していると言われています。
創立から100年以上の歴史を誇る「金属材料研究所(略称:金研)」をはじめ、国内随一で世界でも有数の47分野の研究施設を持ち、論文の被引用数国内大学1位という実績を持つ「工学部 材料科学総合学科」が代表的で、日々、世界最先端の高度な研究が進められています。
▲金属材料研究所1号館
東北大学が世に送り出してきた材料
東北大学ではこれまで50点以上の発明品を世に送り出してきました。代表的な発明品をいくつかご紹介します。
品名(発明年) | 概要 |
---|---|
KS磁石鋼(1916年) | 日本で発明された、当時「世界最強」の永久磁石。 |
センダスト(1932年) | 電子機器の変圧器(トランス)などに使用される磁芯材料。スマートフォン部品にも使用されている。 |
コエリンバー(1940年) | 時計の心臓部にある"ひげぜんまい"と呼ばれる部品に現在も使用されている。 |
アモルファス合金(1973年) | オーディオヘッドや変圧器に使用される軟磁性材料。 |
炭化ケイ素(SiC)繊維(1976年) | 高い耐熱性、軽量、高強度のセラミックス繊維。飛行機の軽量化を目的に最新エンジンに導入され始めている。 |
これらの発明品のほか、私たちに馴染み深い製品で言うとパソコンのハードディスク、スマートフォンのストレージ(データを記録する部分)の材料にも、東北大学の発明品が使われています。
▲本多記念館前、第6代目総長で金属研究の第一人者である本多光太郎博士の像
東北大学の材料研究から生まれた企業
同大学の研究によって発明された材料を製品化するにあたり、多くの企業も生まれています。
|株式会社トーキン
設立は1938(昭和13)年、東北大学 金属材料研究所をルーツに持つ企業です。同大の6代目総長で金属研究の第一人者である本多光太郎博士が発明したTKS磁石、また増本・山本両博士が発明したセンダスト圧粉磁心の商品化を目指して設立されました。
現在は台湾の電子部品製造のYAGEOの子会社であるKEMETの傘下企業となっていますが、創業時と変わらない"素材開発型の企業"として、全世界に製品を供給しています。
また最近では、次世代放射光施設「ナノテラス」に電磁石を納入しています(2022年1月22日 河北新報より)。
(参照:株式会社トーキンHP/最終閲覧日:2023年8月22日)
|東北特殊鋼株式会社
同大の本多博士の提言で1937(昭和12)年に創業。以来、同大や金属材料研究所と連携し、さまざまな特殊鋼の製造や加工、販売を手掛けています。
特に自動車関連部品である吸・排気エンジンバルブ『耐熱鋼』、電⼦燃料噴射装置『電磁ステンレス鋼』においては国内トップシェア(同社調べ)となっています。
(参照:東北特殊鋼株式会社HP/最終閲覧日:2023年8月22日)
|株式会社東北マグネットインスティテュート
同大の牧野教授が開発した、超低損失軟磁性材料「NANOMET®」を実社会において活用・製品化するために民間企業と東北大学ベンチャーパートナーズの出資で2015年に設立されました。
この素材は多くの自動車、家電、情報機器など電気機器の磁心材料として用いられており、省エネルギー、省資源社会の実現に貢献しています。
(参照:株式会社東北マグネットインスティテュートHP/最終閲覧日:2023年8月22日)
現在行われているスゴイ研究
東北大学や関連の企業では、現在もさまざまな新素材を研究、また実用化に向けた商品開発などが盛んに行われています。ここに、特に注目を集めている"スゴイ研究"の一部をご紹介します。
|金属ガラス
1980年後半に同大学金属材料研究所、井上教授のグループが世界で初めて作成方法を発見しました。
この新素材の研究開発、加工販売などを担う株式会社BMGのHPには「セラミックスを凌ぐ強度と耐食性を持ちながら、プラスチックのように柔軟な成形性を持ち、ガラスのような滑らかで美しい外観を呈することから、新金属文明の幕開けを予見する
」と紹介されており、今後の展開が楽しみです。
(参照・引用:株式会社BMG HP/最終閲覧日:2023年8月22日)
|グラフェンメソスポンジ(GMS)
東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の西原教授が発明したカーボン新素材で、リチウム電池の高容量化、長寿命化といった性能アップが期待できます。
このGMSの開発、製造を担う東北大学発ベンチャー企業・株式会社3DC(本社:仙台市)は、2024年以降の市場参入を目指し、国内外の電池・機械・自動車メーカーなどと研究開発を行っています。
(参照:株式会社3DC HP/最終閲覧日:2023年8月22日)
東北大学の材料研究について知ることができる施設、イベント
材料研究が盛んな東北大学について『もっと知りたい!』という方のために、同大では常設の資料館のほか、イベントなどを開催しています。
|本多記念館・資料展示室・記念室
同研究所の創設者であり東北帝大第6代目総長でもあった本多光太郎博士の名を冠した「本多記念館」。1941(昭和16年)年に同大学金属材料研究所の研究棟として落成し、2021年には登録有形文化財にも登録されました。
この建物には現在、同研究所の所長室や事務室のほか、金属材料研究の歴史や成果などが閲覧できる「資料展示室」、また本多博士の遺した机や実験ノートなどが閲覧できる「本多記念室」があります。
「資料展示室」と「記念館」は一般公開されており見学が可能ですが、人数などによっては事前予約が必要です。
また、研究所を見学できるラボツアーも実施しており、こちらは事前申請による承認が必要です。
【施設見学】
・見学可能時間:平日9:00~16:00(※条件あり)
・閉館日:土日祝日
▶詳細は「施設見学の手引き」をご覧ください。
【研究所見学(ラボツアー)】
・見学希望日の10日前までに、同研究所宛にメールによる申請を行う。
▶詳細は「研究所見学(ラボツアー)の手引き」をご覧ください。
(参照:東北大学金属材料研究所HP/最終閲覧日:2023年8月22日)
▲本多記念館
|東北大学片平まつり 2023年きんけん一般公開
東北大学で2年に1度開催される「片平まつり」に合わせ、金属材料研究所が主に小・中・高校生を対象にしたマテリアル研究の体験型イベントを実施。初回は1998年で、2023年は13回目の開催です。
中高生は研究室で実験が体験できるほか、小学生には科学実験ができるいろいろなブースが用意されています。
学生が「マテリアル研究」に触れることができる、貴重な機会となっています。
2023年10月7日(土)きんけん一般公開「潜入!未知なるマテリアルの世界」|東北大学金属材料研究所
最後に
普段何気なく触れている身の回りのさまざまな「材料」も、その研究というとなかなかイメージしづらいかもしれません。しかし調べてみると非常に面白い分野です。
今後も世の中を変える新しい材料(マテリアル)が、この東北大学から生まれてくることでしょう。今回の記事によって、みなさんが東北大学やその「材料(マテリアル)研究」について、興味を持つキッカケとなれば嬉しいです。
※参考サイト(各HPの最終閲覧日:2023年8月22日)
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