2022.07.16
「DAO(分散型自律組織)」が変えるキャリア観-自ら選択し、参加する時代へ
リージョナルキャリア広島のコンサルタント、原田です。先日、『テクノロジーが予測する未来』という本を読みました。
多くのIT関連企業を起業し、日本人で初めてマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの所長を務めた伊藤穰一氏の著書である本書は、盛り上がりを見せる「Web3」「メタバース」「NFT」といった最先端テクノロジーが、経済や社会、個人の在り方にどのような変革をもたらすのか、といったことがとても分かりやすく書かれていました。
(「分かりやすく」と言いましたが、知識不足を補うためにいろいろと"ググり"ながら読み進めたのは内緒です(笑))
web1.0、web2.0、web3.0をざっくり言うと
まず前提として、『Web1.0』はインターネットが普及し、誰もが簡単にWebサイトなどを閲覧できるようになった時代です。
『Web2.0』ではブログやSNSなどの普及によって誰でも「発信」できるようになりました。そして、大量に発信される情報を取りまとめるポータルサイトが生まれ、さらにはGoogleなどプラットフォーム企業による中央集権化が進んだ時代です。
そして『Web3.0』のキーワードは「非中央集権=分散」にあります。そして、それを支えるのがブロックチェーン技術であるのも特徴です。Web1.0が「読む」時代、Web2.0が「書く」時代だとすると、Web3.0は「参加する」時代だと伊藤氏は定義しています。
主体的・自律的な個人に価値が分散していく
Web3界隈では「WAGMI(ワグミ)」というスラングがよく使われるそうなのですが、「We Are Gonna Make It(=自分たちならできる)」の略語なんだとか。そこに参加している人たちの仲間意識だったり、そもそも自分がそこに参加しているんだ、という主体性や自律性が強く感じられます。
こうしたWeb3的な考え方が様々なテクノロジーと結びつくことによって、個人ができることが増え、物事の価値が一人ひとりに「分散」していく時代がすぐそこまで来ている。そして、働き方、文化、アイデンティティ、教育、民主主義に至るまで、世界はすでに新しいルールで動き始めていると伊藤氏は指摘します。
"なんだかよく分からない"、"ついていけない"なんて言っている場合じゃないと痛感するには十分すぎる内容の本書を手に取った自分を、まずは褒めてやりたいと思います(笑)
「DAO」が変える世界
本書の中でも特に興味深く読んだのは、やはり職業柄、「働き方」というテーマについてです。
Web3的な働き方とは何か?それが『DAO(分散型自律組織)』です。「最近よく聞くけれど、詳しくはよく知らない」という方も多いのではないでしょうか。
ここで少し、DAOについて本書から抜粋します。
◆ビジネスは「映画制作」のようになる
DAOは会社組織ではなく、プロジェクトごとに立ち上げられるので、個人は、自分が興味を持ち、貢献できそうなDAOを見つけるごとに「参加する」というかたちで働いていくことになります。作品ごとに制作チームが立ち上げられて、スタッフや俳優を集めて進められる映画制作のような感じです。
◆DAOで、「株主、経営者、従業員」の構図が崩れる
DAOには、そもそも「全体の方針を決める人たちと、それに従う人たちがいる」という分業体制がありません。(略)プロジェクトに貢献する参加者にはトークンが配布される。(略)従業員も契約社員もアルバイトもユーザーも区別なくプロジェクトに貢献することができ、成長することでキャピタルゲインが得られる「自社株」を受け取れるようなものです。
◆働き方は、勤め先に縛られなくなる
DAOに参加するというのは、「この魅力的なプロジェクトで、何か自分に手伝えることはないだろうか」と役割を探しに行くような感じです。
自分から「これ、やります」と手を挙げられるようになっているので、嫌いなことや苦手なことを割り振られることはありません。タスク単位で働いてトークンを受け取ることもできますし、場合によっては、もっと深くコミットするミドル~コアコントリビューターとして、定額のトークンを給料のように受け取る場合もあります。
ここでもやはり「参加」が軸であることが繰り返し書かれています。そしてDAOの一例として、『山古志DAO』が紹介されていました。
新潟県長岡市にある山古志地域(旧・山古志村)は800人ほどのコミュニティ。限界集落と言われるこの地域が特産の「錦鯉」を描いたデジタルアートをNFT化して販売し、購入者は「デジタル村民」になれるという試みが世界で初めて行われました。そして現在ではリアル村民数を超えるデジタル村民がいるというから驚きです。
DAO的にキャリアを切り拓く
どこの会社に勤めるだとか、どこで暮らし、何時から何時まで働くだとか、そんなことをすべて取っ払って参加することができ、自分が貢献した分だけ、誰が見ても正当な対価をもらう。これが当たり前の概念であるDAOが「働き方を変える」と言われるのは納得感ありまくりです。
それともう一つ私が感じたのは、DAOに参加する/しないは別にして、自分の仕事や働き方に対しては主体的・自律的に向き合うことが重要であるということです。
自分は、今の仕事に意思を持って参加し、自律的に関与しているのか、貢献できているのか。今の働き方は、主体的に生きていくために本当に必要な働き方なのか。こういったことを考えたときに、もし違和感があったとしたら、何かを変えないといけないのかもしれません。
中央集権的な何かに身を委ねたり、他律的に意思決定するのではなく、自分の興味や意思をど真ん中に置き、"個人としての価値を磨く"というのがWeb3時代のキャリア観になるのではと感じます。