地域情報ブログ

茨城その他2023.04.21

茨城を舞台にした文学作品たち

こんにちは。リージョナルキャリア茨城スタッフです。

弊社はU・Iターン転職のご支援をしています。Uターンを考えるとき、やはり誰もが「地元」のことについて想いを馳せるでしょう。

そこで今回は、ここ茨城県を舞台にした文学作品たちをご紹介します。触れたことの無い作品があればぜひ一度お手に取ってみてください。

長塚節(ながつかたかし)『土』(新潮社刊・1950年)

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茨城県結城郡(ゆうきぐん)に生まれた小説家・長塚節は、正岡子規に師事し、子規の最も正統な後継者とも言われる歌人でもあります。「馬酔木」「アララギ」の創刊にも携わっています。

そんな長塚の代表作の一つが『土』。夏目漱石の推薦で『東京朝日新聞』に連載されたこの作品は、茨城県地方の貧農一家を中心に、当時の農村の様子を写実的に表しており、のちの農民文学の先駆けとなったと言われています。

ちなみに、夏目漱石はこの作品を絶賛しており「年頃になって、音楽会だの言い始めた頃、娘に読ませたい。恋愛小説と取り換えて欲しいと言われるだろうが、その時は面白いから読めというのではなく、苦しいから読めと言う。世間を知るために我慢して読めと忠告する」とまで言っています。

青空文庫で読むことができますので、ぜひご一読いただきたい作品です。

貴志祐介(きしゆうすけ)『新世界より』(講談社刊・2011年)

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人々が超能力を手にした千年後の日本を舞台に、「神栖66町」(茨城県神栖(かみす)市の辺りに位置する架空の街)で生まれた少女が街の外へと飛び出し、過去の文明が滅びた真実を知っていくストーリです。

物語は主人公の手記の形で構成されており、12歳・14歳・26歳の時期に分けられた3部構成の作品となっています。

上・中・下巻に渡る長編SF作品ですが、漫画やアニメーションにもなっていますので、興味のある媒体で一度触れてみてはいかがでしょうか。

竹吉優輔(たけよしゆうすけ)『レミングスの夏』(講談社刊・2014年)

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2017年に映画化(主演:前田旺志郎)もされた青春群像劇のミステリ小説です。

「レミングス」の名を称した中学2年生の男女5名。彼らはある日、取手(とりで)市市長の娘をある目的のために誘拐します。人生をかけた少年たちの計画は、市を巻き込み、広く波及していきます。

なお作者は1980年の茨城県取手市生まれ。図書館司書として務める傍ら執筆活動を続け、2013年5月に『襲名犯』にて第59回江戸川乱歩賞を受賞し、デビューを果たしています。映画は動画配信サービスで視聴することもできるので、そちらを観てみるのも面白いと思います。

村上春樹『アイロンのある風景』(講談社刊・2015年)

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『新潮』1999年8月号から12月号までに連載された「地震のあとで」と題する連作の短編小説のうちのひとつです。

家出をし、茨城県鹿島灘(かしまなだ)で暮らす順子と神戸に妻と子供を置いてきた三宅を中心に物語が進行します。

「地震のあとで」という題材の通り、連作は全て1995年の阪神・淡路大震災後の時間軸が設定されており、三宅の妻は震災の被害が甚大な東灘区に住んでいるということが物語の中で判明します。

朝井まかて(あさいまかて)『恋歌』(講談社刊・2015年)

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第150回直木賞受賞作。江戸の商家の娘として育った樋口一葉の師・中島歌子は、とある水戸の藩士に嫁ぎます。しかし、その夫は尊王攘夷派の急先鋒・天狗党の志士でした。内乱の勃発により歌子も逆賊として投獄されてしまいます。幕末から明治時代までを駆け抜けるひたむきな恋の話です。

2013年産経新聞に掲載された大矢博子氏の選評をご紹介します。とても肉感があり、興味をそそられることでしょう。

「どうしてこんなことになってしまったのか。その叫びが、慟哭が、鋭く読者の胸を抉る。やりきれない。たまらない。でも読むのをやめられない。」

額賀澪(ぬかがみお)『ヒトリコ』(小学館刊・2017年)

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筆者のデビュー作でもある本作は、第16回小学館文庫小説賞を受賞。茨城県南東部、霞ヶ浦(かすみがうら)周辺が舞台です。

小学5年の時に教師から金魚を殺した濡れ衣を着せられ、熾烈ないじめの対象となった日都子は、その日から「ヒトリコ」として心を閉ざすようになります。そのまま高校性になった日都子の元に訪れたのは、小学校5年生の時に転校した冬希でした。

学校という閉塞的な世界にもがき苦しむ少年少女の生々しい残酷さと、孤独の先に見える小さな希望の光が心を揺さぶる作品です。

著者は茨城県行方市出身。同時に発売された『屋上のウインドノーツ』は第22回松本清張賞を受賞しています。これらの2作品は、大学時代の恩師から「茨城を舞台にしてはどうか」とアドバイスをうけたことが土台にあるとのことです。

佐伯一麦(さえきかずみ)『渡良瀬』(新潮社刊・2017年)

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病気の子供の療養を考え、茨城県古河(こが)市の工業団地へ移り住んだ主人公・南條拓は、これまでの電気工のキャリアを捨てて配電盤の製造工場で勤務を始めます。伊藤整文学賞を受賞した傑作です。

主人公は家族との不和を抱えながらも懸命に仕事をイチから覚え、人間関係を地道に積み上げていきます。緻密な職人仕事の描写が生々しく、専門的な内容に圧倒されながらも丁寧に描かれる物語に引き込まれる地に足の着いた作品です。

新田次郎(にったじろう)『ある町の高い煙突』(文藝春秋刊・2018年)

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2019年に映画化された作品です。

買収により、茨城県へ開業した日立鉱山からなる煙害により、周辺地域では農産物にも影響が出てしまいます。煙害により祖父を喪った地元の若者である関根三郎が立ち上がり、そこから地元住民と日立鉱山との長い苦闘が始まります。最終的には煙害を最小限にとどめるための煙突を作ることとなり、煙害の危機を脱することになります。

今日の企業のCSRの原点ともいえる、実話をもとにした長編作品です。

日立市には日立市政50周年を記念し、新田次郎の文学碑が設置されていますが、その碑には「ある町の高い煙突」の一節が刻まれています。日立市を訪れた際はぜひ探してみてください。

今回ご紹介した作品はほんの一部です。文学を楽しむ方法はたくさんありますが、土地に着目して作品選びをすることで、その作品の背景にある物語を推測することもできます。

ぜひ、自分にゆかりのある土地に注目し、それが題材や舞台になっている作品を探してみてはいかがでしょうか。

※書影について

・長塚節『土』 「新潮社」ホームページより転載 https://www.shinchosha.co.jp/

・その他 「版元ドットコム」より転載 https://www.hanmoto.com/

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