株式会社WELCON
鳥羽祐樹さん(仮名・製品開発) 36歳
自分の気持ちにうそはつけない。異動を機に、本当にやりたい仕事を求めて新天地へ。
鳥羽さんの転職のきっかけは人事異動だった。入社以来、商品開発ひとすじだった鳥羽さんに突然言い渡された異動先は、畑違いの部署。「なんとか残してほしい」と上司に相談したものの、「もう決まったことだから」と話も聞いてもらえない。
数年前にマイホームも建て、簡単に会社を辞められないこともわかっていた。それでも、「ものづくりの仕事」をあきらめることができなかった鳥羽さんは、悩んだ末に転職を決意した。
そんな鳥羽さんが出会ったのは、知名度こそ低いものの、ニッチな分野で国内トップクラスの技術を持つメーカーだった。自分が本当にやりたい仕事を諦めず、新天地へ飛び込んだ鳥羽さんの転職ストーリーを紹介する。
※本記事の内容は、2018年4月取材時点の情報に基づき構成しています。
- 過去の
転職回数 - 0回
- 活動期間
- エントリーから内定まで60日間
転職前
- 業種
- 家庭用電気機械器具の製造販売
- 職種
- 商品設計・商品開発
- 業務内容
- 家庭用電気機械器具の部品設計、試作品評価、関係部署との折衝、量産立上げ
転職後
- 業種
- 拡散接合に関する技術開発及び自社開発製品の製造販売
- 職種
- 製品開発
- 業務内容
- 半導体製造設備などに用いられる拡散接合を利用した3D中空構造の熱対策デバイスの開発
ダメでもともと。いい出会いがなければ、異動を受け入れるつもりで転職活動を開始。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
新潟県内の金属部品メーカーで、開発の仕事をしています。具体的には、半導体製造設備などに用いられている拡散接合を利用した、3D中空構造の熱対策デバイスの開発です。
そのなかで私が担当しているのは、設計の前の基礎研究の部分。熱を取り除いたり、あるいは熱を交換したりするためのデバイス構造についての研究に取り組んでいます。
当社の製品開発はほぼオーダーメイドで行われており、この領域では国内トップクラスの技術と実績を持っている会社です。
入社前のご経歴を教えてください。
地元の新潟から、東京の大学に進学。新卒で新潟県内のメーカーに就職し、入社以来ずっと暖房機器の設計開発を担当していました。
転職のきっかけは?
異動の話があったことです。突然、デスクワークが中心の部署への異動を命じられ、非常に驚きました。ものづくりがしたいという気持ちもありましたし、商品開発にやり残したこともある。上司に「商品開発に残してほしい」と相談しましたが、「もう決まったことだから」と状況は変わらず、そうこうしているうちに引き継ぎも始まりました。
しかし、どうしても納得できませんでした。また、そんな気持ちで異動しても、異動先の同僚とうまくやっていける自信もなかったので、転職活動を始めることにしたんです。もしいい出会いがなければ、異動を受け入れようと思っていました。
転職活動はどのように進めましたか?
新潟市内に家を建てたばかりだったこともあり、自宅から1時間以内で通える範囲で探しました。大手転職サイトに登録したのですが、勤務希望地を「新潟」と指定しているにも関わらず、東京や大阪のオファーがとても多く、新潟の求人情報はなかなか見つかりませんでした。
そんなあるとき、転職経験のある友人にリージョナルキャリア新潟を教えてもらいました。早速コンサルタントと面談し、いくつかの会社を紹介してもらいました。そのなかの一つが、今の会社でした。
今の会社に決めたポイントは?
まず、新しいチャレンジがしたくなったことです。会社見学をさせてもらった際、現地で製品を実際に見て、技術力の高さに驚きました。また、研究開発のためなら、社外に飛び出して大学と共同研究をしたり、費用を惜しまず設備投資したりと、多少コストがかかってもとことん調べる文化があると聞き、とても魅力を感じました。
実はもう一社、転職先の候補があり、そちらの会社は前職に近い仕事内容でした。どちらにするか本当に迷いましたが、どうせ転職するなら、新しいことにチャレンジしてみようと思いもありました。
あとはやはり社長の熱意ですね。社長自らわざわざ会いに来てくれて、「あなたのような人材がほしい」と、熱心に誘ってもらえたこともあり、悩んだ結果、今の会社に決めました。
会社がコンパクトだからこそ、仕事が早い。成長分野だからこそ、やりがいも大きい。
転職していかがですか?
前職では分業化が進んでいたのですが、今の会社は人数も少ないので、1から10まで自分でやらないといけません。そこが最初は大変でしたが、今はむしろ、それが面白いと感じています。とことん自分で調べることもできますから。
また、前の会社は同じフロアに技術の人間しかいませんでしたが、今はワンフロアにほぼ全社員がいるので、相談もしやすいです。
周囲の会話を耳にして、「それは自分の仕事と関係するかも」と声をかけたり、逆に「それはこうすれば大丈夫だよ」と声をかけられたり。会社がコンパクトだからこそ、話が早いし、仕事も進みます。他部署への根回しなど、いらない仕事が極端になくなりました。
妻からも「仕事のグチが少なくなった」と言われるようになりました(笑)。私がいきいき働けていることが、妻にも伝わっているんだと思います。
転職して良かったと思うことは?
これまで以上にやりがいをもって仕事ができるようになったことです。前職は、どちらかというと右肩下がりの分野で、現状維持かコストダウンのための仕事が多く、新しい仕事はほとんどありませんでした。
でも今は成長分野。競合も国内にはあまりいないので、研究開発につく予算が違います。また、言われたものを作るだけではなく、顧客から相談を受け、解決策を提案していくスタイルなので、必要とされている実感があります。
なにより、「熱」はあらゆるものづくりと切り離せないテーマです。エネルギーの最終形態は「熱」ですから、出てきた熱をどう処理すべきか、多くのメーカーが困っているんです。
熱対策の研究が進めば、部品をもっと小型化でき、スマホなどももっと薄くなるはず。世の中を変えるような技術を生み出す可能性もある会社だと思っていますし、そんな技術をぜひ生み出したいと思っています。
困っていることや課題はありますか?
帰宅が遅くなったことですね。まだ仕事に慣れていないこともあって、業務の進捗が予定より遅れてしまっています。慣れてきたらもう少し早く帰れると思うのですが、今は家族には申し訳ないなと思っています。
給与は前職とほとんど変わりませんが、強制的に引かれていた社内積立が減ったぶん、手取りは増えています。
生活面の変化はありましたか?
引っ越しをせずにすみましたので、住まいは変わっていません。帰宅は以前より遅くなりましたが、朝はゆっくりできるようになりました。始業が30分遅くなったうえ、通勤時間が半分の約30分になったので、すごく余裕ができました。
今は、私が子どもを起こして、朝食も一緒に食べられるので、そういったふれあいはとても大事だと思っています。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
すごく悩むと思いますが、とりあえず、いろんな会社を見てまわるのはいいことではないでしょうか。転職活動は、他の世界を見るチャンス。積極的に動いて、企業を訪問したり、見学してみるといいと思います。
ネット上の情報だけではわからないものが見えてくるし、自分に合うかどうかもわかりますからね。悩むくらいなら、動いたほうがいい。動かないと時間だけが過ぎて、もったいないですよ。
また今回は、リージョナルキャリア新潟に相談したことも良かったと思っています。自分に合いそうな転職先を客観的に提案してくれましたし、面談でのヒアリングを通して、「ああ、そうかもしれない」と、自分でも気がつかなかった本心が見えたこともありました。自己分析という意味でも、相談してみる価値はあると思います。