2024.09.14
すかいらーくHDの「資さんうどん」買収が示す、地方企業での新たなキャリア構築の可能性
リージョナルキャリア福岡のコンサルタント、瀬川です。
先日、福岡のビジネス界を驚かせるニュースが飛び込んできました。それがこちらです。
株式会社資さんの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ(PDF)
「ガスト」や「バーミヤン」「しゃぶ葉」などを展開するすかいらーくHDが、日本の独立系プライベート・エクイティファンド(PEファンド)であるユニゾン・キャピタルから、「資さんうどん」の全株式を240億円で取得することを発表しました。
振り返れば、資さんうどんは2018年に創業者の急逝を受け、後継者問題などの背景から、福岡銀行などが出資する福岡キャピタルパートナーズが株式を取得。その後、ユニゾン・キャピタルに全株式が譲渡されていました。
そしてこの6年あまりの間、ユニゾン・キャピタルの支援のもとで経営管理体制やオペレーションの強化、さらなる成長施策が実行され、企業価値の向上が図られてきました。
PEファンドの目的は、投資先の企業価値を高め、売却益を得ることにあります。一般的には投資から3年から5年程度での売却が目安とされていますが、今回のケースでは新型コロナウイルス感染症の影響もあり、通常より長い期間をかけてバリューアップが行われたのかもしれません。
(画像引用:資さんうどん公式HP/資さんうどんの歴史)同じ福岡県内では、浄水器・散水用品メーカーの株式会社タカギ(本社:北九州市)や、調剤薬局大手の総合メディカルグループ(本社:福岡市)が、日系PEファンドに買収された事例があります(総合メディカルグループはその後、欧州の投資ファンドに売却されました)。
さらに、九州全体で見ると、ハウステンボス(佐世保市)やシーガイア(宮崎市)などの大型リゾート施設がアジア系・米系投資ファンドによって買収されており、国内外を問わず、日本企業への投資はますます活発化しています。
一般的に、投資ファンドに買収された企業には「プロ経営者」が送り込まれ、企業価値を最大化するための施策が進められます。さらに、外部からプロフェッショナル人材を採用し、組織の強化が図られることも多いです。
こうした環境では、会社を大きく変革する貴重な経験を得ることができ、魅力的な経営者のもとで多くの学びを得ることが可能です。さらに、一般的にPEファンドが関わる案件は、地方企業と比べて年収が高めであることも魅力の一つと言えるでしょう。
ただし、注意も必要です。前述の通り、PEファンドの最終的な目的は売却益を得ることであり、数年後には株主が変わることが前提です。
株主が変わると、会社の方針や環境、役割が大きく変わる可能性が高く、その変化に備える覚悟が必要です(売却に至るまでの過程においても同様の覚悟が求められます)。
また、首都圏であれば、こうした経験を活かせる企業や同様の投資ファンド案件が多く存在しますが、地方ではその受け皿がまだまだ少ないのが現状です。そのため、地域を限定して転職活動を行う場合、思い通りの転職先が見つからないこともあります。
今後、投資ファンドによる地方企業の買収や、事業会社によるM&Aが増えることで、自分が暮らしたい場所で経験を存分に発揮できる、そんな機会が増えていくことを期待しています。