ダイナミズムと地域貢献の融合-地域特化型REITの先駆者が描く次なるステージ。
株式会社福岡リアルティ
代表取締役社長 小原 千尚
1973年、千葉県生まれ。東京大学経済学部を卒業後、株式会社日本興業銀行(現・株式会社みずほ銀行)に入行。その後、2004年に株式会社福岡リアルティに転職し、投資部長や企画部長を歴任。2015年には福岡地所株式会社(出向)でビル事業部担当部長、執行役員、常務執行役員などを務め、2021年に福岡リアルティの取締役に就任。2024年5月には福岡リート投資法人の執行役員、同年6月には福岡リアルティ代表取締役社長に就任し、現在に至る。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
日本初「地域特化型REIT」の資産運用会社として、2,000億円超の資産を運用。
私たち福岡リアルティは、J-REIT(不動産投資信託)銘柄の一つである「福岡リート投資法人」から委託を受け、資産の取得・売却、賃貸管理、資金調達などを担う資産運用会社です。
福岡リート投資法人は、福岡都市圏を中心に九州の優良な不動産を運用対象とし、地元への資金呼び込みを目的に、日本初の「地域特化型REIT」として2005年に上場しました。これを通じて、世界中の投資家に九州の魅力を発信しています。
この投資法人の資産運用会社である当社には、九州を代表する総合デベロッパーである福岡地所株式会社をはじめ、「七社会」と呼ばれる地元の有力企業などが株主(スポンサー)として参画(※)しています。各社から提供される優良物件や情報を活用しながら、資産規模の拡大と福岡リート投資法人の持続的成長を目指しています。
運用物件は、2005年の「キャナルシティ博多」を皮切りに、直近の「博多FDビジネスセンター」まで35物件に達し、取得額は約2,200億円、直近の評価額は約2,600億円にまで成長。上場した当初の資産規模は735億円であったことから、現在は3倍以上の規模に拡大しています。
(※)福岡リアルティのスポンサー(出資比率)/福岡地所株式会社(55%)、九州電力株式会社(10%)、株式会社福岡銀行(5%)、株式会社西日本シティ銀行(5%)、西日本鉄道株式会社(5%)、西部ガスホールディングス株式会社(5%)、株式会社九電工(5%)、九州旅客鉄道株式会社(5%)、株式会社日本政策投資銀行(5%)
地元の不動産を一番よく知っているのは、地元の人間である。
当社の投資対象は商業施設やオフィスビル、物流施設、住居、ホテルなど多岐にわたり、あらゆる物件を含んでいます。一方で、投資エリアは福岡都市圏が約80%、その他九州地域が約20%と地域を限定した投資を行っており、これこそが「地域特化型」の最大の特徴です。
「地元の不動産を一番よく知っているのは地元の人間だ」という信念のもと、地元ならではの情報収集力や土地勘(マーケット感覚)、産官学との強固なネットワークなどを最大限に活かし、長期的に安定したキャッシュフローを生み出す物件を厳選して投資しています。
<ポートフォリオ(一例)>
◯商業施設
キャナルシティ博多、パークプレイス大分、木の葉モール橋本、サンリブシティ小倉、スクエアモール鹿児島宇宿、マリノアシティ福岡(底地)など
◯オフィスビル
キャナルシティ・ビジネスセンタービル、博多FDビジネスセンター、呉服町ビジネスセンター、天神西通りビジネスセンター(底地)、大博通りビジネスセンター、東比恵ビジネスセンターなど
◯物流施設・ホテル・住居
ロジシティみなと香椎、ロジシティ久山、ディー・ウイングタワー、ティサージホテル那覇、アメックス赤坂門タワーなど
次なる成長戦略を支える人材の採用と育成。
私が設立間もない福岡リアルティにジョインした2004年当時はREIT市場自体が黎明期で、「どちらに転ぶかわからない」という状況でした。それでもここまで事業を拡大できたのは、福岡・九州という地域が持つポテンシャルが大きく発揮された結果だと考えています。
また「Act Local, Think Global」という基本理念のもと、グローバルな視点と地の利を活かした運用を通じて、当社ならではの独自の強みを磨いてきたという自負もあります。
とはいえ、課題もあります。福岡の不動産価格は年々上昇し、物件取得環境が厳しくなっているのです。そのため、従来の「新規取得物件を積み上げ、資産を拡大していく」という戦略だけでは、今後の成長が難しい局面を迎えると予想しています。
ですから今後は適正価格での物件取得や、ポートフォリオ入れ替えによる最適化、既存物件の含み益顕在化など、REITとして新たな成長戦略が必要です。また近年、当社のメインスポンサーである福岡地所株式会社の開発ボリュームの増加に伴って同社からの取得物件が増えていることに加え、スポンサー外からの取得も進行。事業としてのダイナミズムが日に日に増しています。
このような環境変化の中で、グループ全体として資金調達力の多様化・強化や運用のプロフェッショナリズム向上が重要なテーマとなっています。2024年6月の社長就任以来、さまざまな取り組みを進めていますが、その一環として力を入れているのが人材の採用や育成です。
組織再編とDX戦略で、業務効率化と人的資本を最大化。
当社には現在50名強が在籍しており、「運用部」「投資部」「財務部」「企画部」「コンプライアンス部」に大きく分かれています。このうち「企画部」は、経営方針の策定や重要な意思決定のサポートをはじめ、総務・人事、経理、CSRなど広範なコーポレート機能を担う、会社の屋台骨を支える部門です。
しかし、人材(人事)領域においてはリソース不足のため、戦略的な取り組みが難しい状況にありました。そこで私がまず取り組んだのは、人事チームの独立です。現在は「人事・DX部」として部長以下6名を配置し、部門を立ち上げたところです。
さらに、人事をはじめとする各業務にシステムを実装し、DX戦略によって業務をシステマチックに構築していきたいと考えています。これにより、業務効率化と人的資本の最大化を目指すさまざまな取り組みを推進していく方針です。
「シンプル&オープン」をキーワードに組織文化を育む。
人的資本の最大化という意味では、各部門が高い専門性を発揮して業務を遂行する一方で、「横のつながり」を強化し、各部門間の連携を深めることが重要だと考えています。
資金調達、物件取得、運用といった部門ごとの役割は異なるものの、情報を整理し、部門を超えて協力することが必要な場面も多々あります。こうした場面で、自然なコミュニケーションや議論が生まれる環境が理想です。
私が社長に就任後、最初に行った「役員室」の撤廃も、このような連携を促進する意図からです。部門を超えた連携や相互補完が、さらなる専門性の向上をもたらし、ひいては事業全体により大きなダイナミズムを生み出すと考えています。
実際、オフィスを見渡すと、部門を超えたコミュニケーションが増え、メンバーからも「社内の雰囲気が変わってきた」という声を聞いています。少数精鋭のメンバーがワンフロアに集約しているため、その環境を最大限活かした業務環境を整えていきたいですね。
また、私はメンバーに「シンプル&オープン」というメッセージをよく伝えています。私たちの事業を端的に表現すれば「大家業」であり、その視点から「大家がどのような価値を提供すべきか」をシンプルに考えることが重要です。
ステークホルダーが多いがゆえに複雑化しやすい業務もシンプルに保ちながら、社内外に対して公平性、包括性、透明性のあるオープンな組織文化を育んでいきたいと考えています。
キャリアアップと地域貢献を両立できるフィールドを。
こうした組織文化はメンバーの心理的安全性を高める要素にもなると考えています。
当社の業務は高度な専門性を伴うため、経験値や成熟度に応じて業務レベルやパフォーマンスに差が出やすい環境です。しかし、一人ひとりが萎縮したり疎外感を感じたりすることなく、組織に適応し成長していける環境づくりが、私の大きな役割だと感じています。
また、メンバーが持つ「地元愛」や「地域貢献への意識」は、パフォーマンス向上のための重要なモチベーションと捉えています。
ダイナミックな事業を通してプロフェッショナルとしてのスキルを磨くと同時に、福岡・九州に対する「ウェット」な想いをも融合させ、各メンバーが能動的に自己実現を目指せるフィールドを構築していきたいですね。