2023.12.15
Rapidus(ラピダス)建設 未来の姿はこんな感じ?―TSMC熊本工場(JASM)周辺視察と半導体関連企業の千歳進出情報
こんにちは。リージョナルキャリア北海道のコンサルタント、笹本です。
皆さんはTSMCという企業をご存知でしょうか?
正式名称は「Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾積体電路製造股份有限公司)」、台湾に本社を置く世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリ)です。
TSMCは現在、熊本県に工場を建設しており、北海道千歳市に建設中のRapidusの工場と同じく日本政府が巨額の補助金(第一工場に4,700憶円規模、第二工場に7,500憶円規模)を計上し、支援しています。
TSMCの新工場が着工になったのは2022年4月。Rapidusの工場着工が今年2023年9月なので、TSMCの方が1年強先行していることになります。いわば熊本に1年後の千歳の姿を見ることができる、ということです。
先日、弊社代表の高岡が北海道から熊本へ赴き、TSMCの熊本工場(JASM-Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)建設地とその周辺を視察してきました。今回はその様子をレポートしたいと思います!
また後半は、半導体関連産業の集積に向け、千歳周辺への拠点進出を検討・決定している企業情報もまとめてお届けします。
<目次>
※引用元を明記しているもの以外、写真はすべて筆者撮影です。
TSMC熊本工場(JASM)を視察
視察当日は、熊本空港に到着後、TSMC熊本工場(JASM)がある菊陽町へ直行。熊本空港を背にして田園地帯の間を車で進むと、だんだんと小高い丘の上にそびえるJASMの棟が見えてきました。
まず目に入ったのは、道沿いに建つ大きな黒いオフィス棟。そして、その先にはグレーの生産棟が現れました。
オフィス棟の一部は既に今年8月から供用を開始しており、生産棟には10月から、製造装置の搬入が始まったそうです。
来年2月には工場の開所式を予定しているようですので、いよいよ完成も間近です。
(参考:熊本日日新聞「TSMC熊本新工場、2024年2月「開所式」で調整 式典で「第2工場」正式発表の可能性も」2023年12月11日付)
最初の曲がり角を曲がるとまた違うJASMの建物が現れました。こちらは新しい生産棟を建設中なのでしょうか。多くのクレーンが見えます。
さらに進むとソニーセミコンダクタマニュファクチュアリングの建物もあります。そこからもう少し進むと東京エレクトロンの工場も見えました。
視察した時点では、工場の建設は一旦落ち着いているようで、車の交通量もあまり多くありませんでした。
今回見学した工場群のうち、ソニーセミコンダクタマニュファクチュアリングは以前からこの地に工場を構えていました。
そこにこのたびTSMCが進出したことによって、半導体を作るための機械メーカーや半導体メーカー、半導体製品メーカーなどの集積が進み、現在は一体が大きな工場地帯となっています。
今後もしばらく、工場や関連施設の建設ラッシュは続きそうです。
千歳にも半導体関連企業の集積ができる?
この半導体関連の企業が集積するという動き、実は千歳周辺でも加速しています。
2nmというまさに次世代の半導体を製造しようとしているRapidusに対し、直接的に技術サポートを行う企業もあれば、工場建設・稼働にあたって欠かせない資材の供給を行う企業など、現在までに様々な企業がRapidusの工場周辺に拠点設置を検討しています。
たとえば、以下の企業がその筆頭です。
|imec(アイメック)
(画像引用:imec公式HP ※最終閲覧日:2023年12月15日)
アイメックはベルギーにある世界最大級の半導体研究開発機関です。
同機関は千歳市周辺で研究拠点の開設を検討しており、Rapidusとの技術協力契約のもと、半導体の微細化に欠かせないEUV(極端紫外線)露光技術などの共同研究を行うことを表明しています。
(参考:北海道新聞電子版「ラピダス支援 ベルギー半導体、北海道で24年に拠点設立」2023年11月23日付)
|Lam RESERCH(ラムリサーチ)
(画像引用:Lam RESEARCH公式HP ※最終閲覧日:2023年12月15日)
ラムリサーチは米国の半導体装置メーカーです。
特にエッチング加工(半導体ウエハーの表面の加工)を行う半導体エッチング装置の分野では世界No1の技術力を持つ会社で、同社も道内に拠点を設置する意向を示しています。
(参考:北海道新聞電子版「ラムリサーチ道内進出へ 米半導体製造装置大手『ラピダスをサポート』」2023年9月1付)
|ASML(エーエスエムエル)
(画像引用:ASML公式HP ※最終閲覧日:2023年12月15日)
半導体製造装置の大手であるオランダのASMLは、EUV(極端紫外線)露光装置の製造を世界で唯一手掛けている会社です。2024年後半を目途に道内に技術支援拠点を新設することを表明しています。
Rapidusの支援を想定し、2028年頃までに国内人員を4割増やすというニュースもありましたので、同社の進出による雇用創出も期待できそうですね。
(参考:日本経済新聞電子版「半導体装置ASML、北海道に新拠点 ラピダス工場に協力」2023年9月26日付)
|Applied Materials(アプライド・マテリアルズ)
※画像引用:Applied Materials公式HP ※最終閲覧日:2023年12月15日)
アプライド・マテリアルズも、ASMLと同様にアメリカの半導体装置メーカーです。
製造しているのは成膜装置(半導体ウエハーに必要な膜(配線膜、絶縁膜)を形成する装置)などで、世界トップシェアを誇ります。
同社も道内の拠点進出を検討している企業の一つで、それに伴い今後数年間で800名のエンジニアを採用し、国内人員を1.6倍に拡大する方針だそうです。
(参考:日本経済新聞電子版「アプライド半導体トップ『日本で今後数年に800人採用』」2023年5月18日付)
|テクノウェル
(画像引用:テクノウェル公式HP ※最終閲覧日:2023年12月15日)
こちらは日本国内、山口県の会社です。半導体製造装置に関連する配管部品を製造しています。
半導体製造においては、特殊なガスや薬液を使用することから、こういった高い技術を持った配管設備が不可欠です。
同社は、すでに千歳工業団地内の土地の売買契約を締結済みで、Rapidus進出決定後に新規進出を決めた初の半導体関連企業として話題になりました。
(参考:北海道新聞電子版「千歳の工業団地に半導体関連工場 山口『テクノウェル』進出 ラピダス後で初」2023年9月13日付)
|テクノフレックス
(画像引用:テクノフレックス公式HP ※最終閲覧日:2023年12月15日)
テクノフレックスも東京に本社を置く日本企業で、テクノウェルと同じく配管などの製造を行う会社です。
同社は千歳の南側に位置する苫東の工業団地に新工場を建設予定で、早ければ2024年中には新工場が完成する見込みです。
工場のエンジニア等々の人材ニーズが期待できそうですね。
(参考:北海道新聞電子版「苫東に半導体関連工場 東京・テクノフレックス 24年完成目指す ラピダス進出に伴い」2023年8月26日付)
まとめ
千歳市のRapidus新工場が着工してわずか数ヶ月ですが、ご紹介したとおり、既に複数の企業が周辺への進出を検討・決定しています。
TSMC熊本工場やその周辺のように、今後さらに企業や人が集まり、盛り上がりを見せてくれることを期待しています。
ちなみに、Rapidusの工場建設も順調に進んでいるようです。直近の建設地の様子は、下記ブログをご参考ください。
▽前回のブログ
ラピダス建設予定地の「今」-千歳美々ワールド視察その3|リージョナルキャリア
今後も引き続きRapidusやその他半導体関連産業に関わる動向をチェックし、レポートしていきたいと思います。次回もお楽しみに!
▽Rapidus株式会社の求人一覧はこちら
▼北海道専任のコンサルタントへのキャリア相談はこちら
▼北海道の公開求人はこちら