2023.07.18
宮城を舞台にした文学作品たち
こんにちは。リージョナルキャリア宮城スタッフです。
Uターンを考えたとき、切っても切り離せないのはやはり「地元」のことでしょう。
そこで今夏は「地元」から着想し、今回は宮城県を舞台にした文学作品たちをご紹介します。触れたことの無い作品があればぜひ一度お手に取って楽しんでいただけると嬉しいです!
伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』(東京創元社)
第25回吉川英治文学新人賞受賞作品。大学進学で仙台へ引っ越しをしてきた主人公は、隣人から「本屋から広辞苑を奪ってしまおう」と誘いを受けます。2年前の事件と不可思議な隣人が徐々にパズルのピースのようにハマっていくミステリ作品です。
なお、作者の伊坂幸太郎は東北大学出身ということもあり、仙台を舞台とした作品を複数手掛けています。『仙台ぐらし』(集英社)という仙台で生活している日々を綴ったエッセイ集も出版されています。せっかくなので、伊坂幸太郎をもう一冊ご紹介しましょう。
伊坂幸太郎『重力ピエロ』(新潮社)
「春が二階から落ちてきた。」という鮮烈な書き出しが有名な本作は、2009年には映画化もされています。仙台で起こる連続放火事件に興味を持った兄弟の泉水と春。謎を解き明かすにつれて見えてくる真実と、家族の在り方についてじんわりと考えさせられる傑作です。
物語後半で二人の父親が春に向けて言った言葉がとても印象的で、作中で最も好きなシーンとして挙げる方も多いはず。
井上 ひさし『青葉繁れる』(文春文庫)
作家の井上ひさし氏は仙台一高出身。そんな母校である仙台一高をモデルにした愉快な青春小説です。いわゆる「モテない、でもモテたい」4人組は、東京からやってきたイケメンな転校生と仲良くなります。そんな5人はある日、お目当てのマドンナが在籍している県立二女との合同演劇をもくろみます。
若さ溢れるドタバタな青春劇は今もなお色褪せずに読者を引き付けてやみません。爽やかな読後感を楽しみたい方へ。
五十嵐貴久『気仙沼ミラクルガール』(幻冬舎)
2011年、気仙沼に素人ばかりのアイドルグループ「KJH49」が爆誕。たった1か月しかない練習期間、震災後ゆえの心無い批判、そんな山あり谷ありのアイドル活動を描いた青春小説です。
実際に東日本大震災の後、気仙沼に誕生したアイドルグループの実話を元にしているこの作品は、登場人物の想いの熱さや、素人アイドル達が少しずつ成長していく王道ストーリー。笑いも涙もたっぷりと味わうことができるでしょう。
瀬名秀明『パラサイト・イヴ』(新潮社)
作者のデビュー作にもなったSFホラー作品。発表当時は作者が東北大学院に在籍している研究者だったこともあり話題になりました。生物学が著しく発展した時代が舞台で、とある生物学者が事故で失った愛妻の肝細胞を密かに培養していたところ、その細胞が恐ろしい未知の生物へと変化していってしまう、という物語です。
圧倒的な迫力で描かれる描写に手に汗握ること間違いなし。
なお、物語の舞台は明記されていませんが、作者の東北大学院での生活を色濃く反映している箇所も見られ、おそらくモデルにされているのではないかと言われています。
西加奈子『漁港の肉子ちゃん』(幻冬舎)
直木賞作家によるベストセラー小説。北陸の漁港に暮らす、正反対な母と娘の半年間の日常が丁寧に描かれた作品です。舞台は架空の港町ですが、東日本大震災前に作者が宮城県の石巻市と女川町を旅したことをきっかけに書かれたとあり、所々にその名残を感じることができます。
なお、本作は明石家さんま氏のプロデュースにより2021年にアニメ化もされていますので、本を読むのが苦手な方はぜひアニメをお楽しみください。
佐藤 厚志『荒地の家族』(新潮社)
第168回芥川賞受賞作品。東日本大震災から10年ほどの月日が流れた宮城県亘理町を舞台に、震災当時から前に進むことができない中年男性の葛藤や日々を丁寧に描いた物語です。
月日が経ち、徐々に「復興」がうたわれていく中で自分自身もどうにか前進したいが、どうしてもそれができないという主人公の心の内の堂々巡りが豊かな筆致で描かれています。どれだけ日が経とうとも止むことのない心の痛みを描き切った傑作です。
今回ご紹介した作品はほんの一部です。
文学を楽しむ方法はたくさんありますが、土地に着目して作品選びをすることで、その作品の背景にある物語を推測することもできます。ぜひ、自分にゆかりのある土地に注目し、それが題材や舞台になっている作品を探してみてはいかがでしょうか。
※書影については、全て「版元ドットコム」より転載(最終閲覧日:2023年7月18日)
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