住友重機械工業株式会社
向井良太さん(仮名・機械設計) 28歳
機械工学の知識を活かし、設計に取り組みたい。その想いを愛媛へのIターンで実現。
工業系の大学で機械工学を学び、大学院に進んだ向井さん。その知識を活かして設計に携わりたいと大手メーカーに就職したものの、配属されたのはプロジェクト管理の仕事で自ら設計図面を作成することはなかった。
「やはり設計にダイレクトに取り組みたい」という思いが強かった向井さんは、部署異動のタイミングで転職を志向し始める。
神奈川出身、神戸勤務だったが、場所にこだわらず自分のやりたいことを実現できるかどうかで転職先を探した向井さんは、愛媛の住友重機械工業・産業機器事業部(新居浜)へのIターン転職を決意。希望通りの設計職に就けた向井さんに転職活動を振り返ってもらった。
※本記事の内容は、2023年11月取材時点の情報に基づき構成しています。
- 過去の
転職回数 - 0回
- 活動期間
- エントリーから内定まで50日間
転職前
- 業種
- 重工業メーカー
- 職種
- 設備設計
- 業務内容
- 常用および非常用のガスタービン発電設備設計
転職後
- 業種
- 重工業メーカー
- 職種
- 機械設計
- 業務内容
- 医療機器(粒子線がん治療装置、がん診断装置)及び周辺機器の機械設計
新卒で任されたのは機械系の仕事。だが、希望の設計業務ではなかった。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
住友重機械工業の産業機器事業部で、医療用機器の設計に取り組んでいます。私の部署では、電磁石によってイオンを加速させるサイクロトロンという装置を用いて、がん治療に使われる「PET用標識化合物合成システム」などの医療機器を開発しています。
サイクロトロンについては物理の知識が必要なので、物理の専門家が計算をして仕様を決めます。そして私たちが、その仕様を満たせる機構を設計していきます。
通常の機械ですと、機械系エンジニアが仕様も決めますが、加速器の場合は物理系スペシャリストの要望を満たさないといけないのが大きく異なる点です。
新装置の開発や従来機構のカスタマイズを行う際、機械側から見ると問題ない仕様でも、物理側から見ると効果に影響を与えかねない、というケースがあります。そのため、技術者の間でコミュニケーションを深めながら設計を進めることが重要になります。
入社前のご経歴を教えてください。
大学は東京工業大学に進み、学部では材料系の研究を、大学院では流体系に研究テーマを移しましたが、ずっと機械工学の分野で知識を深めました。また、実験に使う装置を自分で製作するため、CADを使ったりもしました。
修了後は、大手メーカーに就職。ビルや病院などの大規模施設が、災害などで停電になった後も電力を切らさないようにする非常用発電装置を扱う仕事を任されました。
といっても、担当したのは設計ではなく、お客様のところに行って要望を聞き、どんな発電装置にすればいいか仕様をまとめる、といったプロジェクトマネージャーのような仕事です。
仕様を決めた後は、社内の設計担当部門と話をして装置を作ってもらい、完成したら再度お客様のところへ行き、納品までの最終調整を行うのが私の役目。設計や作ることには直接タッチしていませんでした。
転職のきっかけは?
プロマネも機械がわかっていないとできない仕事であり、広義で捉えると設計の一分野といえるかもしれません。しかし私としては、実際に自分で手を動かして図面を作成するといった、ダイレクトな設計に携わりたかったのです。
入社して3年後、化学プラントを扱う部署へ異動となり、必要とされる知識がガラッと変わることになりました。
そこで、「どうせ変わるなら、これをきっかけに環境そのものを一新しても良いのではないか」「今度こそ設計に携われる会社に行こう」と考え、転職活動を開始しました。
転職活動はどのように進めましたか?
大手転職サイトを使って設計職の求人を調べ、面白そうな求人には「興味あり」のボタンを押していました。
そうやっていると、リージョナルキャリア愛媛の転職コンサルタントから「一度お話をお聞きしたい」とメッセージが届きました。それから面談してもらい、こちらの希望をいろいろ伝えました。
今の会社に決めたポイントは?
住友重機械工業の求人内容や会社説明を見て、もともと興味を持っていました。エントリーした後、オンラインの一次面接を行い、その後は新居浜まで行って対面での面接。そこでサイクロトロンについても詳しく聞き、機械的要素だけでなく物理や化学が絡んでくるという点に面白さを感じました。
また、そのシステムの設計に機械系エンジニアとして携わることで、自分のスキルアップにもつながりそうな点も魅力的で、迷いなく決断することができました。
物理や化学の新たな知識にも触れられる、医療用機器の設計を担当。
転職していかがですか?
入社前に話を聞いていた通り、設計メインの仕事ができています。前職では設計そのものに関わっていたわけではないので知識不足もあると覚悟していましたが、周囲の先輩方にいろいろ助けてもらっています。やっているうちに、自分の力も徐々についてきました。
私たちの取り組む医療機器は、市場にリリースされるまで数年かかることが大半です。特に、がん治療に直接関わる装置となると、確認・調整の項目も増えるため、スパンが長くなりがちです。自分の関わった製品が世に登場するのはまだこれからですが、その日が待ち遠しいですね。
また、職場環境は変わりましたが、周囲の人々の印象は前職とそんなに変わりません。前職も重工系だったので、雰囲気が似通っているのかもしれません。
転職して良かったと思うことは?
学卒時からの希望だった設計部門に行けて、嬉しく感じます。大学で学んだ機械工学やCADの知識が活かせていて、自分の経験が蓄積されている気がします。
サイクロトロンを扱うのに欠かせない物理の知識は全然足りていないのですが、新たな世界に触れられるのをむしろ楽しみながら仕事ができています。
困っていることや課題はありますか?
設計するにあたり、自分一人で課題をすべて解決できる力がまだついていない、というのが課題です。
もちろん、周囲のみなさんに丁寧に指導してもらっているので問題はないのですが、いつまでも甘えてはいられません。研修制度が整っていて、いろんな分野の研修メニューが送られてくるので、これらも積極的に活用し、スキルアップにつなげていきます。
生活面の変化はありましたか?
私はもともと神奈川出身で、前職の勤務先は神戸でした。今回の転職に合わせて結婚し、一緒に新居浜へ行くことになったので生活面は大きく変わりました。
でも暮らしてみると、神戸時代とほとんど変わらないですね。以前は退勤後に同僚とご飯を食べて帰る日も多かったのですが、今は結婚して退勤後の外食がだいぶ減ったということくらいでしょうか。
前職は寮や社宅があった代わりに、住宅手当などがありませんでした。転職してこれらが追加されたのは嬉しい点です。また休日には、配偶者と海や山によく出かけます。気軽に車で行ける場所に豊かな自然があるのはいいものですね。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
新卒で会社に入ると、漠然と「こんな仕事がしたい」と思っても、配属されてみるとイメージと少し違った、ということも珍しくないかもしれません。新卒学生はポテンシャル採用なので仕方ない面もありますが、自分の意図したものと違う仕事となると、長く続けるのは苦しくなります。そういった違和感を覚えたら、転職という選択肢もあるのではないでしょうか。
転職にあたっては、入社後の仕事を明確にイメージしながら選んだ方がいいと思います。どんな会社かも大事ですが、それ以上に、転職後に自分がどんな仕事を任されるのか、を重視すべきです。その点を曖昧にしていたら、転職してもまた同じ不満を覚えることになりかねません。