住友重機械搬送システム株式会社
加藤祐輔さん(仮名・生産技術) 32歳
人生で優先すべきことを見つめ直し、子育てにベストな環境を選択。
加藤さんは大学院で機械工学を学んだ後、自動車メーカーで生産技術職として活躍していた。学生時代からの夢を叶え「転職なんて考えたこともなかった」という。
そんな彼に転機が訪れたのは、31歳の時、双子を授かったことだった。地方出身の夫妻には関東に頼れる人がいなかったうえ、自身は毎晩残業続き。妻は香川県に里帰り出産したが、その後も子どもたちと実家にとどまることになった。
栃木県と香川県を行き来する単身生活の中で、加藤さんは人生を見つめ直し「自分にとって、より大事なのは、仕事よりも家族」だと確信した。この答えを胸に、四国への転職に挑んだ加藤さんの体験談を紹介する。
※本記事の内容は、2019年9月取材時点の情報に基づき構成しています。
- 過去の
転職回数 - 0回
- 活動期間
- エントリーから内定まで60日間
転職前
- 業種
- 自動車メーカー
- 職種
- 生産技術
- 業務内容
- 生産技術職として、新車の試作業務から始まり、一時車体を離れ新構造リチウムイオンバッテリーの新溶接技術の開発業務経て、直近は海外新車の車体工程計画業務
転職後
- 業種
- 大型搬送機械メーカー
- 職種
- 生産技術
- 業務内容
- 生産技術職として、搬送機器の工程計画業務
今、子育てに参加しなかったら、一生後悔すると思った。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
工場や港湾で使用されるクレーンや搬送用設備を製造する住友重機械搬送システム株式会社の製造部(愛媛県新居浜市)で、設計部からあがってきた図面をもとに生産工程を考える生産推進という仕事をしています。製品はほぼオーダーメイドなので、まずは部品を切り出すところからスタートして、どの部分をどのように溶接し、塗装するか…という一連の工程を考えています。
私が今担当しているのは、船で運んできた鉄鉱石を港に下ろしていく機械。非常に大きくて、完成までに1年はかかります。そうして新居浜で作られた製品が全国の港や工場、製鉄所などで活躍しているのです。
入社前のご経歴を教えてください。
熊本の大学院で機械工学を学んだ後、自動車メーカーに就職し、神奈川県にある研究所で生産技術職として8年間働いていました。最初は新車の試作業務や溶接技術の研究などを担当。転職する直前は車体を量産化するための工程検討に取り組んでいました。
転職したきっかけは?
今このタイミングでしか関われない子育てを大切にしたかった、という点が大きかったです。転職する1年ほど前に初めての子ども、しかも双子を授かったのですが、私は福岡県、妻は香川県の出身。双子の子育ては想像以上に大変で、周囲の協力は不可欠です。当時の私は仕事が忙しく、十分にサポートできる状態ではなかったことから、妻は香川で里帰り出産した後、そのまま実家に残っていました。
私はその間、月に2回ほど飛行機で神奈川から香川まで通っていました。半年ほどそういう生活を続けているうちに、このままではいけないと思うようになったんです。そこから、妻の実家がある四国への転職を考えるようになりました。
転職活動はどのように進めましたか?
インターネットで「四国 転職」と検索した時に、リージョナルキャリア香川の転職相談会が東京で開催されることを知りました。そこに参加してみたところ、コンサルタントが私の経歴や思いをヒアリングしてくれました。
私が伝えた希望は、それまでの経験が活かせる生産技術系の仕事であることと、妻の実家から遠くない職場であること。その後、いろいろな求人案件を紹介してもらえたのですが、意外にも大きな企業が多く、驚きました。何社かの企業を検討した結果、志望企業を2社に絞りました。
今の会社に決めたポイントは?
まずは福利厚生が前職と同程度に良かったこと、そして工場見学した際、の印象が良かったことです。工場見学では今の上司が熱心に説明してくれ、こちらの質問にも丁寧に答えてくれました。
製品のスケールにも驚きましたね。主に港で使うクレーンや搬送システムなのですが「こんなに大きくて、動くものを作るのは面白そうだ」と思いました。
ただ、妻の実家から車で1時間かかるので、その点はかなり迷いました。しかし関東ではその程度の通勤時間は一般的です。そうであれば今の暮らしを続けて子育てに行き詰まるよりも、思い切ってこちらに来た方がいいと考え、決断しました。
家族と暮らす幸せを実感。妻子の体調不良時も両親がかけつけてくれた。
転職していかがですか?
入社してまだ5ヶ月、設計図を見ながら作り方を考えるところは前職と似ていますが、作る製品が全く違うので、いろいろと不慣れなところもあります。今はまだ見習いとして、先輩に付いて勉強しているところですが、既存部品の改造など、簡単な仕事から徐々に任せてもらっています。
人間関係にも恵まれていると思います。私が働いている部署はとても面倒見がいい方ばかりで、スムーズに溶け込むことができました。
生活面でも変化がありましたか?
今は家族で会社がある新居浜に引っ越し、会社まで自転車で30分ほどの距離になりました。今はだいたい定時の16時45分、遅くとも19時には退社できますから、残業が多かった前職とは大きく変わりました。帰宅後は子どもと遊び、風呂に入れ、寝かしつけた後、夫婦でゆっくり夕食を取る、という毎日です。家族と過ごせる時間が圧倒的に増えました。
新居浜の町も暮らしやすく、とても気に入っています。コンパクトな町で何でも揃っているので、不便さは全く感じません。海や山も近いので、子どもたちと遊びに行くのを楽しみにしています。
困ったことや課題はありますか?
生産技術は、現場に依頼することが多い仕事です。そのため、最初はどの部門にどんな人がいるのか全くわからず、苦労しました。今も、現場の人を知り尽くしている先輩から学んでいるところです。
暮らしの面で困ったことは特にありません。都会より遊びの選択肢は少ないかもしれませんが、ストレスを感じるほどではありません。方言も問題ないですね。「新居浜は言葉が荒い」と聞いていたんですが、そんなことはないですよ。
転職して良かったと思うことは?
家族と一緒に暮らすことができるようになり、気持ちに余裕が生まれた気がします。以前は仕事が第一でしたが、子どもが生まれてから、自分の中でだんだんと、仕事よりも家庭の価値が上回っていきました。今は帰ったら「おかえり」と言ってもらえ、妻の手料理が並んだ食卓を家族で囲む、そういう幸せや、家族の大切さも改めて感じています。
しかも今は、周囲に子育てをサポートしてくれる人たちがたくさんいます。だから妻の表情にもゆとりを感じますね。実際、子どもや妻が体調を崩した時も、妻の両親がすぐにかけつけてくれて本当に助かりました。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
人生において自分が大事にしたいことは何か。自分の価値観をよく考えてみて、優先順位が高いほうへ動いてみたら、いい方向へ向かうのではないでしょうか。
そしてまずは何より、動いてみることが大事だと思います。探してみれば、地方にもいい会社はあります。私の場合も、たまたま相談会に参加したことが縁で、今の会社につながりました。そんなふうに、人生は、ちょっとした行動で変わるんだと思います。