株式会社両備システムズ
水野祐介さん(仮名・法務) 34歳
自分の強みを活かせる職場は故郷・岡山にあった。子育て環境を求めたUターンが開いた新しいキャリア。
東京でSEとして就職した岡山出身の水野さんにとって、その就職はゴールではなかった。知的財産権のスペシャリストである弁理士の仕事に惹かれ、システム開発の仕事とも密接に関わる、知財の勉強に時間を費やした。
やがて難関の弁理士試験にも合格し、法務関係の部署に配属。傍目には順調にキャリアを築いているように見えたが、大企業系列のICT企業で思うように自分の力を発揮できないもどかしさも感じていた。
そんな水野さんが転職を決断したのは、私生活の変化だった。第一子が生まれた頃から考えていたUターンが、第二子の誕生で現実味を帯びたのである。「自然の多い広々とした環境で子どもたちを育てたいが、やりたい仕事を諦めたくはない」
岡山に知財関係の専門性を活かせる職場があるのか、不安を抱えながら始まった水野さんの転職活動は、意外なほどに早く実を結んだ。
※本記事の内容は、2018年2月取材時点の情報に基づき構成しています。
- 過去の
転職回数 - 0回
- 活動期間
- エントリーから内定まで111日間
転職前
- 業種
- ICT
- 職種
- 法務・知財
- 業務内容
- 契約書のリーガルチェック、商標の問い合わせ対応など
転職後
- 業種
- ICT
- 職種
- 法務・知財・監査
- 業務内容
- 契約書のリーガルチェック、知的財産法に関する問い合わせ対応など
文系からSEとして就職し、働きながら弁理士資格を取得。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
両備システムズは、岡山市に本社を置く情報サービスの会社です。私は監査室の監査法務グループに所属し、契約書の査読や外部委託の発注書のリーガルチェックなどを行っています。
私は弁理士の資格を持っており、知財関係の相談にも応じていますが、民法など一般法についてはそれほど詳しくありません。
とはいえ、今の仕事では一般法の領域の契約書をチェックする必要もあり、新たに勉強しなければならないことばかり。大変ですが、そこが面白いところでもあります。
入社前のご経歴を教えてください。
岡山県で生まれ、大阪の大学で心理学を専攻していました。しかし、「モノづくりに近いところで働きたい」と考え、文系でも採用があった重工業メーカー系列のIT企業に就職。システムエンジニアとして、2年間東京の本社で業務系システム開発に携わりました。
一方で、その頃から弁理士の仕事に興味を持ち、法律の勉強をしていました。そのため、システム開発グループの中で、契約管理業務やメンバーへの法務教育にも携わるようになりました。
その後、業務後に予備校に通いながら勉強を続け、弁理士試験に合格。これが認められる形で知財管理・法務部門に配属となり、技術契約への助言や、特許出願の中間処理対応などを担当していました。
転職のきっかけは?
第一子が誕生したときから、「いずれは地元の岡山で子育てをしたい」と思うようになりました。当時は千葉県の市川市に住んでいたのですが、通勤ラッシュはもちろん、休日もベビーカーで電車に乗るときは一苦労。公園も狭く、子どもが走り回れるようなスペースもあまりない。ひとことで言うと、窮屈でしたね(笑)。
私は岡山の田舎で走り回って育ちましたから、そういう環境で子どもを育てたいと思いました。妻も「子どもはのびのびと育てたい」という思いは同じでした。そして第二子が誕生したとき、ここがUターンするタイミングだろうと決断しました。
転職活動はどのように進めましたか?
最初は大手転職サイトを使って自分で探してみました。しかし、全国区のサイトはやはり東京や大阪の求人が中心。弁理士の資格を活かせる職種を探していましたが、地方ではそのような求人は少ないのが実情でした。たまに岡山の求人もあるものの、応募者が殺到し、なかなか選考を進むことが難しい状態でした。
そんななか、「岡山 転職」で検索しているうちにリージョナルキャリア岡山にたどりつき、エントリーしました。コンサルタントとオンラインで面談し、自分の状況と希望を話したところ、現職である両備システムズの求人の話を聞くことができました。その後、書類を提出し、岡山本社での2度の面接を経て採用が決まりました。
今の会社に決めた理由は?
会社として今後法務関係に力を入れていきたいという方針があり、特に知的財産権を活用した戦略も考えたいということで、「ぜひ力を発揮して欲しい」と言ってもらえたことが大きかったですね。
また、両備システムズは岡山県内でもトップクラスの規模を持つICT系企業であり、AIやIoTなど最先端の分野にも関わることができます。資格を活かしながら、先端のモノづくりに関わることができる。そんな自分の思い描いていた働き方が岡山で実現できる、自分にとってまさに理想的な会社だと思いました。
子育て環境を考えて決めたUターンで、本当にやりたかった仕事と出会えた。
転職していかがですか?
入社して半年余りですが、まずは職場に慣れるために、段階的に業務を覚えている状況です。両備システムズが一員となっている両備グループには、全体の法務を担当する部署があります。そこに出向し、システム関係の法律だけでなく、幅広く経験しながら吸収しています。
現在でも知財に関する質問を受けることもありますが、本格的に全社として知財に関する戦略に取り組むのは、もう少し後になると思います。
転職して良かったと思うことは?
自分のやりたいことをダイレクトに聞いてもらえるので、ストレスを感じずに仕事に取り組めることです。前職では、やりたいことを提案しても、そこに割く人員もなく、「そは収益になるのか?」いう反応があるだけで、なかなか話が進みませんでした。
今は自分がやりたいことと会社の方針とが一致しているため、仕事がしやすいですね。Uターンの動機だった子育て環境だけでなく、仕事の面でも理想に近い転職ができたと思っています。
困っていることや課題はありますか?
前職では知的財産権に関する分野だけをやっていればよかったのですが、これからは一般的な法務の知識も新たに身につける必要がありますし、知財に関しても、もっと深く学んでいかなければなりません。勉強すべきことは山ほどあるということですね。
生活面の変化はありましたか?
都会での暮らしが長かったので、まだギャップに戸惑うこともありますが、楽しくやっています。子どもたちもだいぶ慣れたようで、広場で嬉しそうに駆け回っている姿は、昔の私を見ているようです(笑)。
また私自身も、満員電車から解放されたのが何より嬉しいです。以前は、体力のマックスを10とすると、出勤後は2くらい(苦笑)。こちらでは10のまま出勤できます。
それから、やはりこちらは食べ物が美味しいですね。特に魚が美味しいので、市場に買いに行って自分で調理しています。サワラの刺身なんて、もう最高です!
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
自分のやりたいことに素直になってみるのも大切なのではないでしょうか。そして、やりたいことが地方にあるなら、Uターンして叶えるのも一つの方法だと思います。
私の場合は知的財産権に関する知識と経験を活かしたいという思いで活動した結果、こうして故郷の会社と出会うことができました。
前職のままだと既存の枠組みの中でしかできなかったことも、現在の新しい職場では枠組み作りから任せてもらえる可能性があります。身につけた専門性を違った形で活かしたいという人には、地方への転職も選択肢の一つになるかもしれません。諦める前に、まずは探してみることではないでしょうか。