定年まで単身赴任で良いのか？「家族との時間」を大切にするため転職を決意。

現在のお仕事はどんな内容ですか。

岡山に本社がある化学工業薬品メーカーの総務部に在籍しています。1931年創業の歴史ある会社で、主力製品である水硫化ソーダや硫化ソーダでは、国内トップシェアメーカーの一つです。

これらの製品は、機能性プラスチックや医薬品や農薬などの原料、重金属を含む排水を無害化する処理剤などに、幅広く使われています。

当社の総務部は5名のスタッフで構成され、私は総務課長を務めています。経理を中心に担当していますが、給与計算から社会保険、決算書作成、納税など、管理業務を全般的に幅広く携わっています。

入社前のご経歴を教えてください。

大学を卒業後、広島の機械メーカーに就職し、6年間経理業務に携わりました。その後、家庭の事情により、妻の実家がある岡山に移り住み、関西や関東を中心にチェーン展開する小売業に転職しました。

当初は経理担当でしたが、後半はゼネラルマネージャーとして店舗運営や経営企画にも携わりました。具体的には、店舗オペレーションのマニュアル作成や数値データの分析、ホームページの作成、店舗を含む全社の予算実績管理、そしてIR全般まで、幅広く担当していました。

転職のきっかけは？

実際に行動するきっかけになったのは、長男の大学進学です。

前職に入社して5年後、本部機能を東京に移転することになり、まずは私が1人で東京へ行くことにしました。その後、家族を東京に呼ぶタイミングを探っていましたが、やはり家族は住み慣れた岡山への愛着がありました。

また、震災が起きたこともあり、家族を東京に呼ぶことは徐々に現実的ではなくなり、結果的に東京での単身赴任生活が続きました。寂しさはありましたが、東京での仕事は面白かったですし、やりがいがもありました。

しかし44歳になった頃から、このまま定年まで家族と離れて暮らすのだろうか、と考えるようになりました。長男が東京の大学に進学するのであれば東京で一緒に生活するつもりでしたが、大阪の大学に進学することが決まりました。岡山―大阪間は距離が近いこともあり、私が岡山へ帰る決心をしました。

転職活動はどのように進めましたか？

実は、転職する1年前から活動を始めていました。いずれ岡山に戻ることは考えていましたし、40歳を超えるとある程度年収も必要になるため、転職活動には時間がかかるだろうと思っていたからです。

リージョナルキャリア岡山を含め、登録した複数の人材紹介会社に自分の状況を話し、「今すぐには転職しないが、情報収集をしたい」と正直に相談しました。紹介会社の方も理解してくれていましたが、希望職種を「経営企画」としていたからか、求人はあまりありませんでしたね。

中小企業では経営企画を「経理」や「総務」が担っている場合が多いので、職種名ではなく仕事内容を重視すべきだとアドバイスをもらい、リージョナルキャリア岡山から今の会社を紹介してもらってからは、とてもスムーズに進みました。

今の会社に決めたポイントは？

前職とは業種も企業規模も異なりますが、地域に根付いた歴史ある優良企業であることや、幅広い業務を担える点が自分に合っていると考え、転職を決めました。勤務地は自宅から約20km、電車で1時間程度です。

また「化学メーカー」という業種にも魅力を感じました。実は、大学時代に化学を専攻しており、1社目も化学系の機械メーカーで技術職に就くつもりで入社しましたが、入社直後に欠員が出たため経理に配属され、それ以来管理部門で働いてきました。そのため、技術的なスキルはありませんが、化学に少しでも関わりのある企業に身を置きたい、という思いはずっと持っていました。

早めに準備を始めたから、転職市場の現状や自分のスキルを整理できた。

転職していかがですか？

これまで経験したことのないことが多く、仕事の進め方も異なるので、インターネットで調べたり、本を読んだり、勉強、勉強の毎日ですね。

また会社の行事が多いことなど、これまでの会社との社風の違いを感じますね。皆で集まって何かをする、ということが前職ではあまりありませんでしたから。でも、いろいろな人と話ができるので、それも良いですね。

生活面の変化はありましたか？

家族との時間が持てるようになりました。下の子は高校生ですが、子どもの成長をちゃんと見ることができるのは嬉しい限りです。長男は、中学、高校時代の姿をほとんど見られませんでした。気がついたら大きくなっていて、声変わりもして、親として何にもしてやれなかったという思いがあります。ですから、今は下の子との時間を大事にしたいと思っています。

また、自分が建てた家にもやっと住むことができました。岡山では海が近いので新鮮な魚も手に入りますし、果物もおいしいです。休日も東京ほど混雑しておらず、ゆったり羽を伸ばせるのが地方の良いところですね。

困っていることや課題はありますか？

強いて言うなら、車が1台しかないことが少し不便です。こちらでの生活にも慣れ、自分の生活スタイルができましたが、妻には妻の生活スタイルがあるので、車の取り合いです（笑）。

会社への通勤は電車ですが、休日に車が必要になることもあるので、そのたびに妻と調整しています。東京では車は必要ありませんでしたが、こちらでは必需品です。

転職を考えている人にアドバイスをお願いします。

人それぞれ価値観は異なりますが、「自分にとって大事なものを見つめてください」と言いたいです。私も転職前に「何が大事なのか」をじっくり考えました。その結果、私にとって大事なのは「家族」だという答えが出せたので、東京での仕事は面白かったけれど、家族との時間を選びました。

早めに活動を始めたのも良かったですね。いろいろな求人に触れるたびに、自分に足りないスキルや知識を考えることができました。足りないものを補うための勉強もできますしね。また、地方の企業の求人情報を、自分だけで集めるのは大変です。そういったことからも早めの準備はおすすめです。