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日本のものづくりを100年先まで守り育てるM&A経営。

三井松島ホールディングス株式会社
代表取締役社長 吉岡 泰士

福岡 更新日:2026年7月15日

1992年11月 J.P.モルガン証券会社東京支店(現:JPモルガン証券株式会社)入社
1995年6月 プルデンシャル生命保険株式会社入社
2001年10月 デロイト トーマツ FAS株式会社(現:合同会社デロイトトーマツ)入社
2007年1月 GCA株式会社(現:フーリハン・ローキー株式会社)入社
2013年7月 三井松島ホールディングス株式会社入社 海外業務部部長 兼 経営企画部部長
2014年7月 同社 経営企画部部長
2017年4月 同社 執行役員経営企画部長
2018年4月 同社 常務執行役員経営企画部長
2019年4月 同社 常務執行役員経営企画部担当
2020年6月 同社 代表取締役社長(現任)
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

この記事でわかること

  • 石炭事業から、企業をグループに迎えるM&A経営へ
  • 日本ストローの成長に見る、「信頼性」を育てる経営
  • 三井松島ホールディングスが守る100年先のものづくり
  • グループ会社の現場で磨く、数字に強い経営力
  • 求めるのは、会社を良くする胆力ある経営人材

「ニッチ・安定・わかりやすい」を軸に、人と経営の可能性に投資する。

100年以上にわたり石炭生産事業を行ってきた三井松島産業(現:三井松島ホールディングス)が、その祖業から完全撤退したのは2023年7月のことです。

ただし、これは突発的な判断ではなく、計画的に進めてきたものでした。私たちは10年以上前から、石炭とはまったく関係のない企業へのM&Aを通じてグループを成長させる方向へ舵を切っていました。そこから平均すると毎年1社程度のペースでM&Aを実施し、現在では持株会社のもとに11社の事業会社が名を連ねています。

私たちは投資ファンドではないので、派手なシナジーで一気に企業を成長させるのではなく、地道な経営改善を積み重ね、着実な成長につなげていくことを目指しています。例えば、利益4億円の会社が毎年5,000万円ずつ利益を伸ばしていく。そのような投資を心掛けています。

投資先を選ぶ際には、「ニッチ・安定・わかりやすい」という方針を軸にして、これまでのM&A実績で培った目利き力や分析力を生かし、投資判断を行っています。ただ、数字や分析だけで決まるものではありません。直感的に「これは面白い」と思えるかどうかも重要です。

そして、何より重視しているのは経営者です。これまで数多くの案件を見てきましたが、結局は社長なのです。誰がその会社を経営するのか。そこに最も大きな差が生まれるというのが、13年間M&Aに携わってきた実感です。数字だけでは測れない、経営者の人となりや資質といった要素も非常に重要だと考えています。

こうした考え方は現在の経営企画のメンバーにも受け継がれています。2013年から続けてきたM&Aの一次・二次スクリーニングは、現在では経営企画のメンバーが担っています。前職からの同僚である担当役員をはじめ、その後に加わった部長や各メンバーとも投資判断の目線が合ってきたと感じています。

「信頼性」が製造業を伸ばす――日本ストローの場合。

まだ石炭事業が主力だった2014年、私たちが手がけたM&A第一号が、東京に本社を置く日本ストロー株式会社でした。当時、同社が製造していたのは紙パック飲料に付属する伸縮ストローが中心でした。

一方で、グローバルに展開する大手コーヒーチェーンはストローを海外から全量調達した上で紙製への切り替えを進めており、今では当たり前になったコンビニのカウンターで配られるようなカフェ用ストロー市場へも、同社はまだ参入していませんでした。もし当時、従来の伸縮ストローだけの事業領域にとどまり続けていれば、M&Aからの12年間で売上も利益もほとんど変わらなかったでしょう。

しかし、日本ストローは新たな市場の開拓に挑みました。これまでの強みを活かしながら、大手コンビニやコーヒーチェーンに向けたストローなどへ取扱品目を大きく広げ、徐々に売上・利益ともに伸ばすことができました。

生産効率の向上など、いわゆるシナジーを生み出す取り組みは当然行っていますが、成長できた最大の理由は「信頼性」だと考えています。製造業で業績を伸ばすためには価格が重要だと思われがちですが、実際に効いてくるのは信頼性です。

日本ストローがこれまで積み重ねてきた信頼を土台に、新たな商品展開が生まれ、少しずつ取引先も広がっていきました。最近では台湾からの引き合いも出てきています。

もう一つ大きいのは、上場会社である当社のグループ会社になったことによる信用力です。大手企業からの信頼を得やすくなり、供給面への不安も軽減されることで取引拡大につながっています。

例えば5年、10年単位で設備投資を行う大企業からすると、取引先の経営の安定性は重要なポイントで、上場企業グループの一員であることは大きな安心材料になります。

ニッチトップの企業は見方を変えれば市場が限られているからこそニッチとも言えます。しかし、日本ストローのように地道な取り組みを積み重ねることで、着実な成長を実現できる企業もあります。

「100年先まで、ものづくりを守る」という志。

当社は経営計画の中で、「日本のものづくりを100年先まで守り育てるプロ企業の集合体を目指す」というスローガンを掲げています。このスローガンは、私たちが抱くある危機感に根差しています。

世の中はDXやAIなど、先進的な技術やサービスに目を奪われがちです。ここ福岡市もスタートアップ創出に力を入れており、大きな盛り上がりを見せています。

しかし実際には、日本の国力はAIだけでは補完できない、ものづくりの現場に蓄積された技術やノウハウによって支えられている部分が多分にあります。そして、その技術を50代、60代、最近では70代の方々が何とか支えているのが実態です。

川上の工程である金型製作から始まり、プレス、研磨へと続くものづくりの世界がある。例えば、半導体製造装置に組み込まれる特殊な液体を格納する容器や、その装置を構成する部材の中には、ごく限られた企業でしか製造できないものがあります。

また、1社で数十社もの取引先をサプライチェーンの上流に抱えている企業も存在します。そのような企業が、クリーンルームの中でチップが自動的に生産されるような最先端の世界を実は足元から支えているのです。私たちは、こうした企業を守り、支え続けていきたいと考えています。

必ず一度は、グループ会社へ。

会社が増えれば、それを率いる人材も必要になります。これまで当社に入社してくれた社員の約9割はキャリア採用です。福岡に生活拠点を置きながらも、キャリアや待遇を妥協したくない。これまで以上にチャレンジしたい。そんな高い志を持った方々が多く集まっています。

私たちはそうした人材を将来の経営幹部候補として採用し、必ず一度はグループ会社へ出向してもらっています。狙いは、肩書きだけのマネジメントにしないことです。課長や部長になったとしても、本社に座っているだけでは工場も営業も技術開発も理解できません。

グループ会社の多くは製造業です。ものづくりの現場が抱える苦労を知らなければ、本当の意味で経営はできないと思っています。二交代制、三交代制の現場では、福岡の本社からは見えない苦労を抱えながら働いている方々がいます。その現場が生み出した売上によって本社が利益を上げ、株主への配当も実現できています。

だからこそ、それに見合うマネジメント力を身につけるには、現場に行くしかないのです。現場に行くと、まず数字で鍛えられます。経営において数字は極めて重要です。数字が分からなければ経営はできません。

そのため、経理、人事、システム、経営企画といった部門で、まず数字を扱う経験を積んでほしいと考えています。ただ、それだけでうまくいくほど現場は甘くありません。「取締役管理本部長」という肩書きだけでベテラン社員がついてきてくれるわけではないのです。

最後に問われるのは、本人のモチベーションや胆力です。自分の出世のためではなく、会社を良くしたい、現場で働く人たちの給料をもっと上げたい、お客さまにもっと喜んでもらいたい。その気持ちこそが何より大切です。

そこで身につく実践的な経営管理能力は一生の財産になります。60歳になっても70歳になっても、その経験を土台として第一線で活躍し続けることができるでしょう。

成長のための出向と、家族への配慮を両立する。

前職で東京勤務だった社員の中には、子どもの成長をきっかけに福岡へのUターンを決断した人もいます。

子育てを福岡でしたいという想いを持っている方はとても多いですね。特に、お子さんが中学・高校に進学するタイミングまでには福岡へ戻りたいと考えている方が多いように感じます。

私は社長になってから東京から福岡へ移り住みましたが、実際に暮らしてみて福岡の良さを強く実感しています。だからこそ、社員には家族と過ごす時間を大切にしてもらいたいと思っています。

一方で、先ほども申し上げた通り、総合職には必ずグループ会社へ出向してもらうという方針があります。正直に言えば、この考え方には矛盾する部分もあります。

M&Aした会社は優秀な人材を必要としていますし、本人にとっても長いキャリアを考えれば必ず良い経験になります。だからこそ、出向はしてもらわなければなりません。これは事実です。

それでも、出向のタイミングについては、それぞれの家庭の事情がありますので、本人の意思やご家族の状況を最優先に考えています。

ホールディングスは一般社員を含めても40名強の組織です。だからこそ一人ひとりに目が行き届きますし、人事運用もかなり柔軟に、オーダーメイドに近い形で行っています。それもあってか、当社の定着率は非常に高いです。

当社には、福岡で暮らしながらも高い志を持って挑戦し続けたい人が集まっています。経営に近い立場で成長したい、日本のものづくりを支えたい、そんな想いを持つ方にとって、非常に面白い環境があります。

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