世界最大手メーカーのグループ会社としてITソリューションを提供し、MXを推進。
DMG MORI Digital株式会社
代表取締役社長 鈴木 祐大
札幌出身。大学時代を東京で過ごした後、地元にUターン。1995年に北海道拓殖銀行へ入行後、NHKの経理財務部門を経て、2007年に株式会社ビー・ユー・ジー(現:DMG MORI Digital株式会社)へ管理部門担当として入社。2018年から2年間DMG森精機への出向を経験後、2022年代表取締役社長に就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
学生ベンチャーの先駆けとして生まれたソフトウェア会社。
北海道大学大学院の院生4人が当社を設立したのは1980年。学生ベンチャーの先駆け的な存在で、株式会社ビー・ユー・ジーとしてスタートしました。
まだコンピュータが一般的でなく、IT企業がほとんどない時代です。そんな中に誕生した希少なソフトウェア会社だったため、設立間もない時期から大手企業との共同開発の機会に恵まれました。
主な実績には、ソニーとの8ビットマイコン「SMC-70」周辺機器の共同開発、大日本印刷の依頼で開発したコンピュータ上でのデザイン・編集システム「MicroPage System」、NTTと一緒に取り組んだISDNの家庭用ターミナルアダプタ「MN-128」といったプロジェクトがあります。ちなみにMN-128は、NTT経由で100万台以上が売れるヒット製品になりました。
コンピュータが社会に浸透するに従って、ビー・ユー・ジーの業績は成長。「札幌でコンピュータに関する仕事がしたい」と希望する北大出身者を中心に従業員も順調に増え、1988年には現在の社屋建設に至りました。
ビー・ユー・ジーは、ソフト・ハードにこだわらず、コンピュータに関することなら何でも貪欲に取り組みました。ですから社内には、ハードに強いエンジニアもソフトを得意とするエンジニアもいれば、ネットワーク・通信に詳しいエンジニア、量産品の製造管理に長けたエンジニアもいました。システム開発に必要な役割が全て揃っていたため、大手との共同開発にも対応できたのです。
2000年代に入り、NHKの依頼によるスーパーハイビジョン対応ビデオカードの受託開発や、組込み型基板・ミドルウェア・制御アプリケーションをパッケージ化した組込み開発ブランド「Cente」のリリースを開始。JAXAと共同開発した映像信号変換装置は、「国際宇宙ステーションの映像伝送能力の進歩に貢献した」ということで、NASAのGroup Achievement Awardも受賞しています。
ソフト・ハードがパッケージ化された大きなシステムから、ターミナルアダプタのような細かな機器まで作れる点は、ビー・ユー・ジーの強みです。そしてその強みのおかげで、腕の良いエンジニアがのびのびと力を発揮できる環境が整っていました。
やりがいを求め、DMG MORIグループへ。
2008年、世界トップクラスのシェアを誇る工作機械メーカーDMG森精機株式会社(旧:株式会社森精機製作所)との資本・業務提携がスタートします。森精機は工作機械の付加価値を高めるためにソフトウェアはますます重要度を増すと考えていました。
一方、ビー・ユー・ジーもその頃、事業環境の変化を感じていました。従来はコンピュータ性能が十分でなかったため、実用に耐え得るシステムを組むにはエンジニアの高いスキルが不可欠でした。
ところがコンピュータ性能の急速な向上で、「それなりに機能するシステム」ということであれば、開発がそれほど難しくなくなってきたのです。では、腕の良いエンジニアはどこに向かえばいいのか。DMG森精機との資本・業務提携の話が出たのは、そんな渇望感を抱いていた時でした。
工作機械で世界の最先端を走る森精機には、最高水準の技術が求められます。これは誰にでもできるものではない、エンジニアにとってやりがいを見いだせる仕事だと実感しました。その後、2013年に完全子会社化。2023年、グループのブランド統一を図るため、DMG MORI Digitalへと社名変更を行いました。
現在はDMG MORIグループのIT開発の中心的な拠点となっています。DMG森精機の工作機械は、航空、自動車、半導体、金型など世界中のあらゆる製造業の工場で稼働しています。これらの工作機械に欠かせない制御ソフトや機械をネットワークにつなぐコネクティビティ分野の開発を私たちが提供しているのです。
お客さまの要望に耳を傾け、自律的に考えられるエンジニア組織に。
DMG森精機が掲げるMX(マシニング・トランスフォーメーション)戦略を実現し、お客さまの期待に応えるには、グループのIT分野を担う私たちがさらに進化していく必要があります。機械に搭載される制御ソフトを高度化するだけでなく、お客さまの生産工程をデジタルに管理・分析するソリューションの提供にも取り組みます。
そのためには、私たち自身がお客さまと直接対話し、お客さまのお仕事を理解する必要があります。DMG森精機のお客さまが、工作機械を扱い、操作盤上のソフトウェアを触るのは、自社製品を作るという目的のためです。ソフトウェアそのものに触れること自体が目的ではありません。
お客さまの目的を達成するためには、ただソフトウェアを高度化させるのではなく、機械を使うお客さまの仕事を知り、ソフトウェアで何ができるのかを考えなければならないのです。
ビー・ユー・ジー時代の大手企業との共同開発では、エンドユーザーと直に接点を持つことは多くありませんでした。受託開発では提供された仕様に基づき品質の高い開発をすることが最重要でしたが、今は私たちもメーカーの一員です。工作機械を知り、お客さまのことを知る必要があります。そして、どのような技術を提供できるか、自律的に考えなければなりません。
工作機械について学び、エンドユーザーのことをよく知る。これはDMG MORIグループに加わってから今も続く、チャレンジングな課題です。これにチャレンジすることで、私たちはもう一段階上のレベルアップが図れると思います。
独自ブランドの開発・販売にも注力。
開発するシステムの大部分はDMG森精機関連ですが、組込機器向けミドルウェアCenteなど、ビー・ユー・ジー時代から継続するプロダクトもあります。現在、グループ外への販売の割合は大きくありませんが、今後はそこにも力を入れていきます。
グループ外へ販売する自社製品の開発には、世界最大級の工作機械メーカーのグループ会社という、非常に良い立ち位置を最大限に活かします。私たちの自社製品がDMG森精機の厳しい要求をクリアし採用されるレベルに至れば、競争力の高い製品となり得るでしょう。そのような高品質な製品を開発し、グループ外への販売にも取り組んでいきます。
さらにグループ外への販売を事業として確立させるには、製品企画、営業・マーケティング、サービスといった組織能力を高めることも必要です。2030年を目途に、徐々に形にしていきたいと考えています。
札幌で世界トップ水準の開発に携わってほしい。
エンジニアにも、いろいろな個性を持った人がいます。プログラミングスキルの高さも一つの要素でしょうが、そればかりではありません。お客さまの声を聞き、何を求めているか理解した上でコンセプトを立案し、お客さまのところに持っていける顧客対応力・提案力を持つエンジニアもいるでしょう。
大勢のエンジニアの動きを把握しながら一つのプロジェクトをスムーズに進める、マネジメントに長けたエンジニアもいます。どんな能力であれ、何か一つ自信の持てるスキルがあれば、当社で実力を発揮できるでしょう。
当社がエンジニア人材に対して最も重視するのは、自ら考え、自律的に動けるという資質です。この業務は何のためにやっているのか、開発の背景にどんな思想があるか、などに興味が持てれば、突発的なトラブルがあっても根本のぶれない対処が可能となり、「こうした方がお客さまのためになる」といった提案も積極的にできるでしょう。自律的にものを考えて動くことで、最終的な仕事のアウトプットが変わるはずです。
DMG森精機は2022年、平均年収が20%程上がる給与改定を行いました。当社もその給与体系に倣い、待遇面で札幌の企業としてトップクラスを実現しています。札幌で世界トップ水準のITソリューションに関わりたい。そんなエンジニア魂のある人を私たちは歓迎します。