企業TOPインタビュー

先人のスピリットを受け継ぎ、広島から世界へ挑戦し続ける。

株式会社シンコー
取締役副社長 筒井 雄三

広島 更新日:2023年8月30日

1987年、広島県広島市生まれ。関西学院大学商学部を卒業後、三菱商事株式会社を経て2012年に株式会社シンコー入社。2018年に取締役、2023年に取締役副社長に就任し現在に至る。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

世界トップシェアのパイオニア企業、「世界を動かすシンコー」として。

当社の創業は1938年、私の曽祖父の代まで遡ります。町工場である「新興金属工業所」として操業を始め、その後、船舶用ポンプ・タービンの専業メーカーとして成長を続けてきました。1988年には創業50周年を迎え、これを機に社名を「シンコー」に変更。2023年12月に創業85周年を迎えます。

当社の事業領域は四つ。「一般商船事業」「陸上プラント事業」「ガス船・基地事業」「海洋開発事業」です。特に、私たちの代名詞とも言える船舶用ポンプの分野では、原油タンカー用カーゴオイルポンプ(陸上へ原油を移送するためのポンプ)およびその駆動用蒸気タービンにおいて、世界シェアの80%以上を獲得しており、LNG(液化天然ガス)運搬船用LNGポンプ(陸上へLNGを移送するためのポンプ)でも世界シェアの90%以上を占めています。

また、陸上プラント事業における500kW以上の発電機タービンも国内生産台数1位となっており、まさに「世界と日本におけるトップメーカー」の地位を確立しています。

このようなシェアを獲得するまでには、いくつかの重要な節目がありました。例えば、かつてはポンプとタービンが別々の企業の製品として供給されていた時代に、当社は舶用機械メーカーとして世界で初めて、これらをセットにした製品として提供することに成功しました。

また、業界をリードしてLNGポンプの検査設備を自社内に設けたことで、そのノウハウを活かした製品が世界有数のエネルギー企業に採用され、ガス関連の分野でも注目を浴びる存在となりました。

こうしたパイオニア精神や専業メーカーとしての強みが私たちのブランド力の礎となり、現在では「世界を動かすシンコー」として世界中の人々の豊かな暮らしを支えています。

※シェアやランキングに関する情報は外部機関による調査と自社調査に基づいています。

「論理」的な強みと、「情緒」的な強み。

当社の強みは多岐にわたるため、私はよく「論理」と「情緒」の二つの側面で表現しています。

「論理」の側面では、当社の強みは大きく三つあります。まず、自社技術への強いこだわり。当社の原点とも言える鋳造技術を始め、各種技術を徹底的に追求し、設計開発から加工、組立、検査まで、独自の高度な技術を磨き続けています。

次に、ここ広島ですべて生産しているという点も強みです。素材から完成品までの生産工程を一貫して広島で行うことで、品質の高さと安定性を確保しています。

そして三つ目にアフターサービスが挙げられます。製品の寿命が数十年にわたる場合もありますので、トラブル対応やメンテナンスは非常に重要です。熟練のエンジニアチームやITを駆使し、世界中でトラブルが発生しても迅速かつ確実に対応できる体制を整えています。

一方で「情緒」の側面では、当社の理念に集約される価値観を指します。創業当初から脈々と受け継がれるスピリットが、当社の強みの源泉です。

「顧客最優先」「チャレンジし続ける」「一致団結する」「やりがい、生きがいを持つ」-これらのスピリットやリーダーシップスタイルが現在でも当社の強みを支えています。

脱炭素社会への挑戦。

近年の「脱炭素」の進展などによりエネルギー市場が転換期を迎えている中で、現在はLNGポンプの市場が活況を呈しています。LNGは石炭と比べて燃焼時のCO2排出量が半分と比較的環境に優しいエネルギーで、脱炭素社会達成までのブリッジソリューションとして注目を集めています。

こうした特性から、最近ではLNGを運搬する船以外でも、LNGが燃料として使用されるようになっています。もともとLNGを運搬する船では、積み荷のLNGを燃料として使用してきました。その際にLNGをエンジンへ供給するポンプが必要となるのですが、当社はその分野でも世界シェアトップを持っています。

ただし、LNGを運搬する船以外でLNGが燃料として使われる場合は、LNGをエンジンへ供給するポンプの仕様が我々の既存製品とはまったく異なるものとなり、海外製のポンプがこの市場を席巻している状況です。

いわゆるレッドオーシャンと呼ばれる市場ではありましたが、外部環境を分析する中で今後ますますLNGを燃料とする船が増えてくる可能性が高いことや、当社製品をご使用いただいている多くのお客様からのご要望もあり、2022年末に当該ポンプの自社開発に成功しました。持っているリソースを最大限活用して、わずか1年半で開発、顧客レセプションまで漕ぎ着け、その後納入にまで至っています。

これは技術力ももちろんですが、まさに当社のスピリットである「顧客最優先」や「一致団結する」力が体現されている良い例だと思います。

一方で、LNGはブリッジソリューションであることも忘れてはいません。上述のエピソードと時は前後しますが、当社は長年LNGで培った極低温の知見を活かし、液化水素(LH2)を荷揚げするポンプの開発にも成功し、世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」にも納入させていただきました。

加えて、液化二酸化炭素(LCO2)を荷揚げするポンプの製品化・納入にも成功しており、現在はアンモニアを燃料とする船向けにアンモニアをエンジンへ供給するポンプの開発に着手するなど、脱炭素社会という時流に対応すべくチャレンジし続けています。

会社に流れる「良い血」をさらに循環させていきたい。

チャレンジという意味では、人材採用や組織づくりにおいても新しい取り組みを進めています。キャリア採用もその一つです。

これまでは新卒採用が中心でしたが、今後は即戦力として活躍できる人材を積極的に採用していく方針です。設計開発などのエンジニア、人事などの管理部門系、情報システム系、建築(ファシリティ)系など、幅広いポジションにおいて採用を拡大していく予定です。

さらに、人材と組織の発展のために、人づくりや組織づくりにも注力しています。管理職クラスを対象にした「経営塾」や「マネジメント塾」などの勉強会を通じて、マネジメント力やリーダーシップなどの向上を図っています。

また、社員一人ひとりが仕事とプライベートを両立して充実した日々を送るために、どのような仕組みやバックアップが必要かについても議論を重ねています。

私自身、シンコーという会社が好きで、ここで働く社員が好きなんです。これも論理と情緒なんですが、社員たちが給与や待遇面の満足と、やりがいや充実感といった感動を、仕事を通して見つけてくれることが嬉しいんですよね。

だからこそ、会社の未来を担う一員として、良いところは残しつつ、変えていく必要があるところは変えていきたい、新しいことをしたいという思いを強く持っています。当社に流れる「良い血」をさらに循環させていきたい。そんな心臓とも言える役割をしっかり果たせるように、日々、研鑽を積んでいるところです。

編集後記

チーフコンサルタント
原田 昌和

広島を代表する企業であり、同時に世界的な業界のリーダーとして地位を確立している同社。その歴史をたどりながら、今後の展望についてエネルギッシュに語っていただきました。

過去、現在、未来という異なる時間軸から、「シンコースピリッツ」を真に尊重されていること、そして、それが社内全体に浸透していることが強く感じられました。

何度も大きな困難に直面しながらも、社員一丸となって乗り越えてきた先人たちの歴史こそが同社の強みであり、また、その強みを今後の世代に引き継ぎながら更なる発展を遂げたいという筒井氏の情熱が、同社の未来を支えていくのだろうと感じるインタビューとなりました。

関連情報

株式会社シンコー 求人情報

株式会社シンコー 転職成功者インタビュー

企業TOPインタビュー一覧

ページトップへ戻る