CRM戦略策定から実践まで。体温を感じるマーケティングをワンストップで提供。
フュージョン株式会社
代表取締役社長 佐々木 卓也
1974年生まれ、帯広市出身。2000年、大手印刷会社からフュージョン株式会社に入社。2011年5月、代表取締役社長に就任。米国DMA公認ダイレクトマーケティングプロフェッショナル。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
マーケティングはさらに複雑化・高度化している。
時代・社会が激変する情勢において、企業のマーケティング活動は複雑化・高度化しており、最適解を見出すのが容易ではなくなっています。そんななか、私たちフュージョンは、CRM(顧客関係性マネジメント)戦略策定から購買データ分析、クリエイティブ、テクノロジー、オペレーションに至るまで、顧客マーケティングに関わるあらゆる業務をワンストップで支援。顧客企業とカスタマーとの関係維持や向上を図っています。
カスタマーの情報を一元管理し、関係を深めることを目的とするCRMのためのツールはいろいろ揃っています。しかし、ツールを導入しただけでCRMがうまくいくわけではありません。意味のあるCX(顧客体験)を提供し、ロイヤルカスタマーを育成するには、人の心を動かし、体温を感じさせる戦略・戦術が不可欠です。
CI・VIをリニューアル。時代に合った提供価値を発信。
創業30周年を期に、CI(コーポレート・アイデンティティ)・VI(ビジュアル・アイデンティティ)のリニューアルも行いました。2020年にチームを立ち上げ、2021年から社内で共有するための活動を開始。対外的に打ち出したのが2022年です。ここで私たちは「マーケティングに、体温を。」というコンセプトを打ち出しました。
マーケティング会社にとって、変化に敏感に対応するのは当たり前です。変わり続ける社会において、自分たちはどうあるべきか。どういう役割を担うべきか。アイデンティティを見直し、提供価値を発信し続けることが大切なのです。
実際、当社がベンチマークする海外のマーケティング会社などは、いつもCIを変化させています。少し前なら、ダイレクトマーケティングを標榜する会社はたくさんありました。しかし、今や「ダイレクト」を強調する会社は減ってきています。と言うのも、個々のカスタマーにダイレクトにアプローチするのは、もはや業界の常識になっているからです。
グローバルな流れを見据え、私たちも自らのあり方を変えるべきと考え、CI・VIリニューアルに至りました。フュージョンが何を大事にしているのか、お客様も従業員も理解を深めてくれたようです。
「どの時間にバリューを生み出しているのか」を見える化。
コロナ禍は、多くの企業の事業活動を混乱させました。当社への影響も小さなものではなかったですが、そこで生まれた時間を私たちは自己を見つめ直すことに費やしました。
当社のような事業は、手を動かすことに比例して生産が進むというものではありません。お客様の相談に乗り、情報・知識を集め、提案を企画する、というプロセスも必要です。そこで、お客様のため活動する時間を「クライアントタイム」、それ以外の時間を「ノンクライアントタイム」と定義し、それぞれを測定できるようにしました。
クライアントタイムという考え方は、お客様にも徐々に浸透しています。「一緒に考えてもらう時間や、相談に乗ってもらう時間には、対価が発生するよね」とおっしゃって頂けるお客様が増えてきました。人手不足など厳しい状況のなかでマーケティングを進めているため、外部に頼れる相談相手がいるのなら対価を払ってでも相談したいと考える企業が少なくないのです。私たちにとっては、大変ありがたいことだと思います。
社内的にも良い効果が生まれています。例えばプレイングマネージャーの場合。一般的な会社だと「営業が忙しくてマネジメントができない」と言う人もいるかもしれません。しかし当社では、クライアントタイムとノンクライアントタイムの比率を5:5、あるいは6:4にしよう、などと定義しているので、どれだけマネジメントに充てられるか、客観的に判断できます。「忙しい」を言い訳にできなくなったわけです。
ただし、クライアントタイムは、タイムパフォーマンス、いわゆるタイパばかりを重視する考え方とは異なるものです。タイパとは、成果をより手早く生み出してお金に変えようとすることですが、クライアントタイムは、タイムパフォーマンスの対極にあるような「愛すべき無駄」も含んでいます。お客様の相談に乗る、話し相手になるという、タイムパフォーマンス信奉者からすると無駄に見える活動も、当社はきちんとクライアントタイムとして定義している。だからこそ、お客様に受け入れられ、信頼の形成につながっているのです。
「深化」と「探究」をバランスよく進め、サービスを充実させる。
2023年の「第37回全日本DM大賞」において、当社はグランプリを獲得しました。これは2020年、2021年に続き3度目であり、金賞は6年連続、DM大賞での表彰は16年連続となります。お客様と一緒に悩み、考え抜いて作り上げたものが、第三者機関から評価されるのは、ありがたいと感じます。こういう実績が、お客様の新たな依頼を呼び込むきっかけにもなります。一つの丁寧な仕事が、次の仕事を作るわけです。
少子高齢化により市場が縮小する昨今は、どのお客様も「今のカスタマーとの関係をどう維持するか」に注力しています。新たなカスタマーの取り込みが難しいため、今いるカスタマーとの信頼形成がとても重要になっているのです。
一度お付き合い頂いたカスタマーにリピートを促す。休眠カスタマーを掘り起こしてカムバックさせる。ロイヤルカスタマーの有り様を再定義し、ロイヤリティーを満たすだけのサービスを提供する。それらを実現したい…といった相談が、どんどん増えています。
お客様の期待に応えるため、私たちは「深化」と「探究」をバランスよく進めていこうと考えています。「深化」とは、お客様との関係を深めること。お客様の思いや悩みを知り、本質をつかむことで、実効性のある提案につなげるものです。
「探究」は、事業パートナーとの連携を強化することです。今や、すべてのサービスを自社のリソースだけで賄うのは困難です。専門的な技術や知見があり、方向性に共感できるパートナーがいれば、個人のフリーランスであれ法人であれ、連携して共創する方がより良い価値の提供につながります。
AIやChatGPTなども登場していますが、これらを事業に組み込むため、スキルを持つ会社とのコラボが進んでいます。大手企業とも資本業務提携を結び、協調してやっていく体制を整えています。こうして、フュージョンをハブとする関係経済圏を生み出し、成長させる。それが、お客様のためになるサービスを実現する原動力となるでしょう。
マーケティングには、愚直で誠実に頑張る姿勢が不可欠。
「マーケティング」という職種に、華やかなイメージを抱く人もいるかもしれません。しかしそれは表面的なもので、重要なのはコツコツ努力する姿勢です。お客様の話をよく聞き、悩みや課題を誠実に受け止める。そして現状から原因を探り、ロジカルシンキングによって解決策を明確化していくわけです。
一つのプランがゴールを迎えたとしても、そこで提案は終わりじゃありません。一つのハードルをクリアすれば、次のハードルが表れる。乗り越えるには、愚直にやり続けるしかないのです。マーケティングは、想像以上に泥臭い仕事です。
「お客様の現在と未来に貢献する」という思いだけでなく、「自分はどうありたいか」というビジョンを持つことも大事です。それがないと、お客様の御用聞きで終わってしまうかもしれません。言われたことはできるけど、言われないことには思いが至らないのなら、お客様がわざわざフュージョンに仕事を依頼する意味はありません。「あなたはどう思うか」とお客様に問われた時、明快に答えられるのは、自己実現をしっかり考えている人です。
当社にとって最も重要なリソースは、人です。2023年から人的資本経営に取り組むことを宣言したのも、人が大事だと考えるからです。年収、有給消化率、教育費、女性比率などあらゆる指標をより良いものにし、長く安心して働ける環境を作る。それでこそ従業員も、未来を見据えて頑張れるようになるのだと思います。
マーケティングは簡単な世界ではありません。一人前になるまで、2~3年かかる人もいるでしょう。しかし愚直に、誠実に頑張る人を、当社はしっかり支えていきます。それでこそ「マーケティングに、体温を。」というビジョンが実現するのです。