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『Grass to GAS』酪農生産をワンストップで支える専門商社。

株式会社コーンズ・エージー
代表取締役社長 南部谷 秀人

北海道 更新日:2023年2月15日

函館生まれ。富山商船高専機関学科を卒業し、1987年、コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド入社。エンジニアとしてキャリアをスタート、後に営業として活躍。2009年、コーンズ・エージーの代表取締役社長に就任。2023年、就任15年目を迎える。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

飼料、搾乳、再資源化…。酪農の循環体系をワンストップで構築。

当社は、酪農事業者の皆様に革新的で効率の高い製品とシステムを提供する酪農専門商社です。1997年、搾乳ロボット事業を始め、これまでに1000台以上のロボットを日本市場に導入するという実績を築きました。

これと並行して、飼料生産や給餌など乳牛を管理するための設備やシステムを提案。いまや糞尿処理や再資源化まで含め、酪農全般の循環体系を一貫して構築する力を持っています。私たちコーンズ・エージーは、この循環体系の構築に向けて『Grass to GAS』という事業コンセプトの下、酪農における持続可能性を追求しているのです。

循環体系の構築といっても、酪農には、様々なプロセスがあります。例えば、乳牛の主食である粗飼料、すなわち牧草などの生産と収穫です。牧草を育てるには、種を播く機械、収穫する機械を準備するなど、フィールドマネジメントが必要になってきます。また、育てた牧草を牛に食べさせる給餌設備、すなわちフィードマネジメントも大事です。そうして牛に十分な栄養を与えて、いよいよ搾乳を行えるわけです。

さらには、動物ですから、乳だけでなく糞尿も大量に出します。この処理をマニュアマネジメントとしてシステム化することが求められます。糞尿を処理した際に生成されるバイオガスは、エネルギー資源として発電することが可能です。

このような飼料生産→給餌・飼養管理→搾乳→糞尿処理→再資源化という流れは、どれ一つ切り離せないものです。しかしながら、これらのプロセスに必要な機械や設備を、一度に揃えられるわけではありません。今年はここのピースを整備し、次の課題はその数年後に拡充し…という具合に、農場の全体像を見ながら、適正なバランスの中で構築していかなければなりません。

だからこそ、コーンズ・エージーは、酪農に関する各種マネジメントをワンストップでサポートできる会社として、多くの生産者樣にご愛顧頂いているのだと思います。私たちのようなワンストップソリューションを提案できる会社は、日本国内はもちろん、世界を見渡してもほとんどありません。そういった意味でオンリーワンの存在と言えるでしょう。

世界中の情報と経験をベースに、日本の酪農を発展させる。

そもそも酪農経営は、自然と生き物を相手にする非常に難しい世界です。乳牛は哺育期から育成期まで、生まれて14ヶ月くらいで種付けし、その後10ヶ月で出産します。乳が出始めるのはそれからで、搾乳まで2年位かかるわけです。つまり、設備投資や農場の拡充は、2年以上先を見据えないといけない、ということです。

事態が急変したからと言って、すぐ減増産できるわけでもありません。加えて、コロナ禍や他国の戦争で、昨今の生産活動はとても厳しい状況にあります。ここを乗り越えるには、保守的でありながら、かつ前衛的な2つの異なる大局的な農場経営が重要となるでしょう。

一方、少子化により酪農の担い手は減少しています。事業を円滑に行うには、各マネジメントを強化し、生産性を向上させなければいけないと、どの生産者様も頭を痛めています。保守的経営を意識しつつ、生産性UPに向けた挑戦・変革はおろそかにできない。酪農は、そんな難しい局面に置かれているわけです。

それゆえ、私たちは、世界中の情報と経験をベースとした課題解決の提案を具体的に実践する企業でなければならないと考えています。

2018年、コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドの持つ全株式を譲渡する形で、当社はオリックスグループの傘下に入りました。先ほどお話した背景から、もう一段階の飛躍を遂げるには新しい環境が必要ではないか…その1つの答えが上場企業の視点を持つ事だと考え、オリックスグループに参画しました。

これまで酪農分野を本格的に展開したことのないオリックスから当社に寄せられる期待は、決して小さなものではありません。当社は、日本の重要な基幹産業のひとつである酪農分野で、価値の高いサービスを提供する、という基本理念を大事にしながら、生産者の皆様の期待に応えていきたいと考えています。

機関士を目指し、航海訓練で世界一周も経験した学生時代。

今となっては、日本の酪農に対し使命感をもって社員と共に日々奮闘していますが、実は、私は学生時代まったく違う分野を学んでいました。

機関士だった父親の影響を受け、富山商船高専(現・富山高専)の機関学科に入学。中学卒業後に生まれ育った函館を離れ、寮生活を始めたのです。エンジニアに興味があり、外国を見てみたいという強い思いもありました。

卒業実習としての航海訓練では、90日間の世界一周も経験。この時に、アメリカ、オランダ、イタリア、エジプト、そしてシンガポールに寄港し、国際人としての見聞を広げました。今現在、商談や新しい酪農技術を視察するため、私自ら海外出張に行く機会が多いのですが、学生時代でのこうした学びは今に生きているのかもしれませんね。

そんな私が、当社の前株主であるコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドと出会ったのはちょうど就活時期。研究室の担当教官から、外資系輸入商社で仕事をする先輩からコンピュータができる学生の採用依頼があるので会ってみないかと打診されました。

卒論テーマが自動制御であったこともあり、適任だったのだと思います。会ってみるとイギリス系企業で、運輸やメーカーとは違う惹かれる雰囲気があり、商社マンとして入社を決めたというわけです。

イギリス系企業に就職。システムエンジニアとしてスタート。

私が農業機械部の母体である札幌支店に配属され、最初に担当したのはイギリス製個体識別システムの自動給餌機でした。学生時代に学んだ自動制御の知識が役立ったものの、当時は最新だったはずのテクノロジーも今では考えられないようなローテクとなりましたが、そんな環境でエンジニアとしてキャリアをスタートしました。

輸入する製品のシステム担当として仕事をしていましたが、酪農生産の全体像を掴むことはできませんでした。1つの製品の専門家になることはできても、酪農生産は縦と横に展開する事が求められます。もっと深く知りたいという思いが強くなっていきました。

そんな時期に大規模な組織改革があり、私は営業部門へ配属となりました。営業なんてできないと思いましたが、実際に取り組んでみると多くの人に会って色々な考え方に触れられることがとても面白いと感じました。事実、この時期に私の職業人生に深く影響する方たちに出会えたのです。

44歳で社長に就任。

それから35歳くらいまでは、第一線の現場に立ち、非常に面白い時期でした。輸入業務をはじめ、外国メーカーとの交渉や講習会の通訳など精力的に働き、結果にもコミットしていました。その結果、35歳で本州・九州営業本部の責任者、37歳で執行役員になりました。このようにお話すると順調に見えるかもしれませんが、実は挫折も経験しています。

その後、44歳で代表取締役になりました。今思うのは、「この瞬間にも現場で働き、何かを感じている人がいる。その人たちが真の解決策を持っている。口先だけでは現場は納得しない。経営者は、自分の目で現場を見極めなければならない」ということです。

そして、現場で汗をかく社員には、「思い切りやれ!誰でも社長になれるチャンスはある!」と言いたいですね。挫折など、誰にもあるもの。そこからどう敗者復活するかが大事なのです。もう一つ、人を信じることはとても大切で、信じる人のために全力を尽くしてほしい、とも思います。

UIターン人材による化学反応が、人と会社を成長させる。

私たちコーンズ・エージーは、これまで多くのUIターン人材を迎えてきました。他の会社・業界を知る中途人材は、当社に化学反応を起こす存在として力を発揮してくれています。人の成長は、自分とは異なる価値観の人と一緒に仕事して、「この人すごい」という気づきを得ることがきっかけになるのではないかと思います。そこで化学反応が起こり、大きく化けるわけです。

会社も同じで、似た発想の持ち主ばかりが集まると、同質化して事業が伸びなくなります。不測の事態に対応する耐久力が弱くなってしまうのでしょう。中途人材は、同質化に陥りがちな社内のあちこちで化学反応を起こすトリガーとなってくれていますね。

では、化学反応を起こすためには何が大事でしょうか。一般的な企業では、KPIやKGIといった目標達成型指標で社員をマネジメントするのが主流となっています。しかし、当社のような商社の場合、それだけでは充分ではありません。

私が強く推奨しているのが「GNN」です。GNNとは「G=義理 N=人情 N=浪花節」のこと。KPIとは全く対岸の概念ですが、数値目標ばかりでは心身がすり減ってしまいます。なんのためにやっているのか、という本質を見失わないためには、義理や人情、浪花節も大事だと思うのです。

もう一つ、「リーダーシップ」を求める企業が多いと思いますが、私がしっくりくるのは「キャプテンシー」です。いかに知識があっても、フィールドに立たず外野から指示を出すだけでは、人は動きません。

特に私たちのように、お客様の困りごとをどう解決するか、といったことをコアに置く企業は、現場に出ずに事業を推進しようとしても、うまくいかないのです。

みんなでフィールドに立って、一緒にボールを追いかけることで見えてくるものがある。私自身も、常に現場を大事にしたいし、当社で働く社員にも、キャプテンシーを持ってメンバーと協力してほしいと思います。

編集後記

チーフコンサルタント
笹本 香菜

南部谷社長のお話を伺って感じたのは、常に高い視座からビジネス、そして酪農の未来を見据えているということです。

地域に根差し、何よりも現場を大切にする姿勢を持ちながらも、世界で何が起こっているのかアンテナを張り、酪農家の方々に対しての更なる貢献を考え続けていることが伝わってきて、同社の酪農にかける想いと使命感をより強く実感することができました。

また、インタビュー中は、南部谷社長の周りに対する細かな気遣いも非常に印象的でした。同社は今や280名を超える社員がいますが、社長は社員一人ひとりの名前や出身地を覚えていて、社員から驚かれることがあるそうです。お客様だけでなく、社員の事もよく考えていることが伝わり、南部谷社長のお人柄も感じられるインタビューとなりました。

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