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新潟・長岡から世界へ。研削盤メーカーとして更なる飛躍を。

株式会社太陽工機
代表取締役社長 渡辺 剛

新潟 更新日:2022年8月31日

1977年 新潟県生まれ。
2001年 千葉工業大学卒業後、太陽工機入社。海外営業部長、常務取締役海外営業部長を歴任
2019年 代表取締役社長に就任
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

立形研削盤を主力とする研削盤専業メーカー。

太陽工機は新潟県長岡市に本社を置く研削盤専業メーカーで、1986年に父が創業し、私が2代目です。2001年からはDMG森精機グループの一員となりました。1989年に先代が開発した立形研削盤が主力商品で、国内・海外の様々な企業で使っていただいています。

社員の平均年齢が37.2歳と若いのも特徴でしょうか。海外販売は親会社であるDMG森精機のネットワークを活用して行っており、さらに中国、アメリカ、ドイツには我々太陽工機の専任スタッフがいるので、彼らが細かいサポートをしてくれています。

当社はこれまで、リーマンショックをはじめ、世界で巻き起こる様々な事象によって、業績の浮き沈みを経験してきました。私が社長に就任した2019年には初めて売上が100億円を超えましたが、そこから米中貿易摩擦のあおりで売上がガクンと下がり、その後の米中合意を受けて良くなっていくかなと期待をしていたらコロナ禍になるなど、予期せぬことが次々と起きることにとまどいもありました。

しかし、そうした場面でも、その時その瞬間での最適、最善だと思うことをやっていくしか前に進む方法はないと思っています。2021年からは受注が好調になってきて非常に良い状況なのですが、今度は部品調達が難しい状況にあります。

受注はどんどん入るけれど生産が計画をこなせないというジレンマが悔しいところですが、それでも確実に売上を伸ばしていくことで、今後のさらなるステップアップを目指したいと思っています。

2030年、売上200億円の目標に向かって。

現在の当社の実力は売上100億円前後を行き来しているという状況ですが、目標としているのは2030年までに年間売上200億円の達成です。現状から2倍にするというのは非常に大変なことではありますが、市場は十分にあると思っています。

効率よく売上を伸ばしていくために必要なのは、やはり製品群の充実だと思っています。いま、我々が受注している仕事は、95%がカスタムメイドです。

それが当社の強みであり、お客様のニーズを取り入れた機械を作るということを36年間積み重ね、我々のベースとして培ってきました。その大切な部分は消すことなく、一方で汎用機、標準機の割合を増やしていきたいと思っています。

完全受注生産は仕事を受けた後部品調達から始めます。そうすると、部品調達の波も相まって10カ月くらいの長納期になってしまいます。しかし、お客様は発注したときが欲しい時。お客様の要望に応えるべく、ストックを持っておくというビジネススタイルも、今後は必要だと思っています。

それを実現するためには、現在の工場ではスペース的にも、人員的にも足りないということで、新しい工場の建設計画を進めているところです。

円筒研削盤を海外市場へのドアノッカー的製品に。

当社はいま海外比率が30~35%ですが、研削盤全体の市場で1/3を占める世界の円筒研削盤市場ではまだ「太陽工機って何?」という認識なのです。DMG森精機という大きなグループの一員としてやっていても、そうなんですね。

立形研削盤は研削盤のなかでは市場が非常に小さくて、競争が無いのはメリットですし、お客様にフィットすれば必ず受注が取れるのですが、そういうユーザーを探すのが難しいという現状もあります。

それを打破するために円筒研削盤部門をしっかり立ち上げて、海外市場を開くドアノッカー的な製品にしたいと考えています。そこから、研削盤メーカーとしての太陽工機の認知を広げ、引いては得意な立形研削盤の導入に繋げたい、という戦略です。

海外比率は確実に上げることができると思っています。当社の100億円の売上のうち、いまは日本国内だけで70億円です。自動車や工作機械など、いろいろな国内産業で使っていただいています。

目をドイツに向けてみると、世界トップの自動車メーカーや工作機械メーカー、飛行機、風力発電など、日本と同じような業界がたくさんあります。極端な話をすると、そこに日本と同じ営業リソースを投入できれば、ドイツ国内でも70億円稼ぐことは可能という計算になりますよね。もちろん、実行はなかなか難しいですが。

いずれにしろ、海外に市場は絶対にあるので、中国やアメリカなど、それぞれの国にしっかり人員を置いて、グループネットワークを最大限有効活用すれば、200億円は不可能な数字ではない。その頃には国内と海外の比率が50:50になっているのではと考えています。

目標は明確ですが、それに向けて社員全員を同じベクトルに向かせるのは難しいですね。そこは私が繰り返し話をしていくことが必要なのだろうと思っています。

汎用機開発を通してコスト管理を浸透させる。

もうひとつ、当社の課題だと思っているのが、これまでは機械1台1台に対して部品を手配してきたので、原価を抑えて作る方法にあまり長けていないということです。

先ほどもお話ししたように今まで立形研削盤の市場は競争が少ないマーケットでした。しかし、これからは環境が変わってきます。競争の少ないマーケットには当然、後発も出てきます。その時に、厳しくコストを管理して利益をしっかり稼ぐ体質を持っていないと、価格競争で負けてしまいます。

もちろん今でも原価率の指標はあるのですが、そこに収まっていれば良しとしてきたので、もう少し工夫すればさらにコストを下げることができるのでは、という部分がある。そもそも3台、5台を一緒に作っていけばコストが下がるという作り方をしてこなかったので、その発想が無いんです。

汎用機のラインナップを増やしたいというのは、その発想を根付かせるためにも、絶対にやりたい。サプライヤーとどう価格交渉をするのか、その手法を学んでほしい。それができれば、自ずとカスタムメイドにも活かされていくと思います。

簡単ではないと思いますが、会社としてこの先も続いてくためには、この変化は絶対に必要なことですし、変わっていくための鍵となる部分だと思っています。

お客様の要望を叶える1台のためにはコミュニケーションが重要。

我々の仕事は、営業から始まり、機械を検査して出荷するまで、いくつもの部署が連携して、やっと1台ができ上がるんですね。特にお客様の仕様に合わせた作り込みをしているので、携わっている人同士に認識の違いがあると、求められていたのと違うものができてしまう。重要なのはしっかり対話をして、同じ認識を持って、同じ方向に仕事を進めていくことです。

そのため採用の際には、コミュニケーションがしっかり取れて、自分の考えを持って他の人と意見交換ができることを重視しています。そういった人材が、各々の力を発揮することで相乗効果が生まれ、大きく成長できる会社になっていけると思っています。

面接のときは当然、志望動機などを聞きますが、書いてあることをそのまま読む人と、同じ内容でも自分の言葉で話せる人は違うかなと思っています。私も営業を経験してきましたが、いろいろなお客様がいらっしゃって、中には寡黙な方もいらっしゃる訳です。そこに営業で訪ねて、初対面というなかで30分話を続けることができたら、それは才能だと思うんです。

仕事の話だけでなく自分の趣味や家族の話題なども織り交ぜて話ができる人は、会社に入ってからもうまく人間関係が構築できると思うんですよね。ですから、新卒学生には学生時代にしかできないことをたくさん経験してください、その経験が社会人になってからの仕事に活かされていくのです、ということを伝えますね。

キャリア採用の方には、趣味の話なども聞きますね。仕事に集中するためには、休日にしっかりオンオフを切り替えることが社会人には大事だと、自分の身をもって知っているからです。自分のコンディションづくりのためにも、趣味を持ちなさいということは社員にもよく話しています。

誰もが改善提案の意見を出しやすい風土づくりが社長の仕事。

キャリア採用の方の面接の際は、前職の実績を達成するために何をしたのか、過程を重視して話を聞くようにしています。求める人材として、我々は海外市場での拡大を狙っているので英語が話せれば一番いいのですが、ただ、話せなくても上手くコミュケーションを取れる人もいるんですね。

臆することなく、自分のスキルでコミュニケーションしていく人は、仕事もちゃんと進んでいく。やはり、自分の言葉で誠心誠意伝えていると、相手も聞いてくれる。近頃はそういう行動力がある社員が増えてきたので、彼らから社内全体が変わっていくのかなと期待しています。

社員のなかには、やはり海外に対して壁を感じている人もいる訳ですが、その壁を低くする効果は出てきていると感じます。

キャリア採用の方に私が求めているのは、太陽工機では当たり前だけれど、外から見るとそれはおかしいからやり方を変えた方がいいのではないか、という部分を指摘してもらうことですね。実際、そういう発言をくれる人がいて、会社の風土を変えていく上でも必要なことだなと思っています。

同時に、社内でも管理職やマネジメント層が社員からの提案にしっかりと向き合い、お互いに指摘し合っていける環境にしていくことが、向上していくためには必要だと思っています。太陽工機のこれまでのやり方のすべてが正しい訳ではなくて、それを変えていける風土づくりが私の仕事だと思っています。

編集後記

コンサルタント
皆川 暁洋

同社は売上拡大、海外比率向上を目標に掲げていますが、そこへの道筋、社員への期待に満ちたインタビューでした。

「失敗してなんぼ」「努力をせずに受注しても力はつかない」など、苦しい局面でも常に前向きに取り組んできた姿が印象的で、「今となっては良い経験だった」と語るなど、チャレンジできる組織風土を作るために、他者とのコミュニケーションに優れた人材を集めようとされていると感じました。

長岡を代表する企業として、益々成長される姿しか思い浮かばないほどの力強さを感じる内容で、将来へ向けて同社への期待しかありません。

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