企業TOPインタビュー

重力を自在に操る技術の進化で、社会課題を解決し世界No.1を実現。

株式会社タダノ
代表取締役社長・CEO 氏家 俊明

香川 更新日:2021年10月27日

1961年生まれ。慶應義塾大学を卒業後、1984年に丸紅(株)入社。建設機械部長・経営企画部長・常務執行役員・輸送機グループCEO等を歴任。2019年、(株)タダノに取締役執行役員専務として入社。2020年、代表取締役副社長に就任。企画管理、グローバル事業推進、CS、国内・海外営業、米州事業・営業統括等を担当。2021年、代表取締役社長・CEOに就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

独自技術に他社のノウハウをアドオンし、進化スピードを加速。

2019年7月、タダノはドイツのDemag社というクレーンメーカーを買収しました。過去1990年にも同じくドイツにあり、クレーンのキャリア(走行体)メーカーであるFaun社を買収しましたが、今回の買収はそれに匹敵する大型案件でした。この買収でタダノのラインナップに「クローラクレーン」が加わり、最大吊り上げ能力は従来のオールテレーンクレーンの550tから3000t以上へと、大幅に拡充しました。

タダノは1955年に日本初の油圧式トラッククレーンを開発して以来、ほぼ自力で技術開発を行ってきたクレーンメーカーです。完全な独自路線でありながら、世界に伍すクレーンを香川で造り続けており、技術レベルは高い水準にあります。しかし今や、タダノに限らずどのメーカーでも、自社開発力だけで世界のニーズに対応するのは容易ではありません。情勢変化が早過ぎ、技術開発が追いつかないのです。そんな中、高水準にあるタダノの技術に他社技術をアドオンすれば、進化スピードが格段に上がるでしょう。

タダノは「LE(Lifting Equipment)世界No.1を目指す。」という長期目標を掲げて事業を展開しています。Lifting Equipmentとは吊り上げる・引き上げる・持ち上げる機械のことで、クレーンや高所作業車が代表例と言えます。こうした分野でタダノは、独自技術を磨いてきました。その技術は堂々と世界と闘っていけるだけの厚さと深みがあります。これにDemag社買収によって、技術の広がりが加わりました。タダノには、世界一を狙えるポテンシャルがある。そう確信したからこそ、私は入社を決めたのです。

建設工事の大型化が進む中、“課題を解決する技術”が求められる。

昨今は、建設工事の工期短縮による機械の大型化が世界的に進んでいます。例えば都市部で主要駅の移設を行う場合ですと、周囲への影響の大きさを考えると、交通をストップできる深夜のうちに、短時間で重要なプロセスを終えてしまいたいですよね。そこで、駅の橋脚などの巨大建造物を動かすための吊り能力の高いクレーンが必要になります。

また、世界的なカーボンニュートラルの流れを受け、欧米では大型風力発電がかなり伸びています。100mのポールを立て80~150トンの発電機を搭載する、というケースも珍しくありません。こうした工事にも、同じく吊り能力の高いクレーンが求められます。

陸上でも洋上でも適地が少ない日本は風力発電に積極的ではありませんでしたが、別の見方をすると、日本の状況を考慮した大型風力発電建設のソリューションがないから、と言えるかもしれません。風力発電はグリーンエネルギーの主要な担い手であると分かっていても、建設技術が揃わなければ、手の打ちようもありません。

こうした状況に対応するため、スピード感のある技術進化が必要なのです。吊り能力がアップすれば、対応できる建設工事が広がります。新たな能力を持つクレーンの誕生により、不可能だった工事が可能になる。大型風力発電の日本での建設や、都市部インフラ工事の迅速化にも貢献できるかもしれません

技術がないからと手をこまねいている状況は、世界各地にあります。タダノが技術を提供することで、国内外の課題を前進させる。クレーンによって社会の課題を解決する、というリフティングソリューション(LS)を提供していきたいと考えています。LSによって世界の課題を解決することが、LE世界No.1の実現につながるでしょう。

新機種、電動化、DX、安全性向上にもスピード感をもって取り組む。

当社のコア製品である大型オールテレーンクレーン領域では、今後4年で15の新機種を投入予定です。主力市場で勝負を避けていては、LE世界No.1などおぼつかないでしょう。それ以外の製品ラインナップも充実させます。機種ごとで見ると既に世界トップの地位を築いているものもあり、例えば北米向けラフテレーンクレーンは、2021年3月発表の新製品が好評で、想定を大きく上回る受注をいただきました。こういった顧客に高く評価される製品を増やしていきます。

モバイルクレーンの電動化・脱炭素化にも取り組みます。現在は高松にある技術研究所が主力になって研究を進めていますが、買収を契機に、ドイツにも研究所を作る計画が進んでいます。そもそも電動化・脱炭素化は、ドイツが遥かに先を行く分野ですから。Demag社の周囲には、これらに詳しい研究者や学者が大勢いるし、サプライヤーも揃っています。そういった環境の中で日独の技術を融合させる方が、開発スピードは上がるでしょう。

DX(デジタルトランスフォーメーション)にも注力します。タダノはクレーンメーカーとして他社より先行して、GPS・携帯端末でクレーン稼働状況をリアルタイムで把握するシステム「HELLO-NET」を導入するなど、IT活用には以前から積極的に取り組んでいます。

また、一般の乗用車では、センサやカメラ、通信システムを駆使して運転中のドライバーをサポートしていますよね。こうした安全システムは、実はクレーンにこそ求められるものです。巨大な移動体を一人で動かすのだから、当然死角も増えます。しかし、安全性の向上のためにカメラやセンサなどのデバイスの数を増やせば増やすほど、コストは割高になってしまいます。そこで必要最低限のデバイスで効果を最大化するために、ディープラーニングなどIT活用が欠かせません。

そのほか、生産ラインの進捗をデジタル技術でコントロールし、さらなる効率化を図る必要もあります。このように、あらゆる面でDXを浸透させていきます。

日米欧が融合した「グローバルONE TADANO」で。

タダノグループの社員は約5000名、うち2000名はドイツで働いているという状況になりました。今後は日本とドイツ、それに有力市場であるアメリカの連携・融合をさらに深め、日米欧で協力する体制を整えようというプロジェクトが既に始まっています。「グローバルONE TADANO」で、世界の課題に目を向けていこうということです。

しかし、簡単ではありません。タダノは独自技術を持つ会社ですが、Faun社にも150年の、Demag社にも190年の歴史があります。技術者たちの自負を尊重しつつ、手法の差異をなくして一体化するのは大変です。クレーンは量産品とは言え、マーケットインで生まれる製品です。各地のユーザーの声に耳を傾け、そのニーズに応える技術者がいなければ、市場に受け入れられる製品が造れないという点では、むしろ一品モノに近いと言えるでしょう。

だからこそ、技術者たちは製品にプライドを持っています。日本集権型のガバナンスで彼らのプライドを損なっては、強みが発揮できません。虎を猫のように飼いならすのではなく、虎は虎のままで活かす。そういうガバナンスが求められます。そのため私もスピード感を持ち、グローバルマインドを大切にして取り組んでいきたいと思います。

変化を加速させるには、経験や知見を持った中途人材が不可欠

世界情勢に対応するため、事業や組織、あるいは技術の変化スピードをいっそう上げなければいけません。それには中途人材も積極的に採用し、活躍いただきたいと考えています。

電動化・脱炭素化の研究・応用開発を行う技術者や、カメラやセンシングによってクレーンの操縦安全性を向上させる技術者、自動車業界などで似た領域にいる人の知見は、すぐに転用できるのではないかと思います。生産技術も常にレベルアップしなければなりませんし、過酷な環境でクレーンを安定稼働させるためのメンテナンス技術も大事。またDX推進を考えると、AIなどITスペシャリストも不可欠でしょう。「グローバルONE TADANO」を進める上で、経営管理・経営企画・法規などをグローバルな視点で扱える専門家も必要です。

当社では既に、多くのキャリア人材が入社し、それぞれの専門性を発揮する人、グローバルに事業をリードする人とさまざまです。自社で磨いた技術にDemagなど他社技術が加わったことで技術進化のスピードが上がったように、人材についても他社で培った経験や知識を有するキャリア人材が更に活躍してくれることで、タダノグループ全体の変革を、よりスピーディーに、よりダイナミックに進められると考えています。高い志と先進の技術を原動力に、世界No.1を達成したいですね。

編集後記

チーフコンサルタント
溝渕 愛子

氏家社長ご自身が「間違いなく世界一を狙えるポテンシャルがある」と確信して入社を決意されたというエピソードは印象的で、グローバル市場で闘い抜く確固たる覚悟とエネルギーがひしひしと伝わり、胸を打たれました。

また、製品の脱炭素化・自動化などで環境課題に取り組むだけでなく、クレーンの能力を高めて技術を提供することで、国内での大型風力発電の建設が進み、環境負荷低減への貢献を果たし、さらにはこれまで不可能だったインフラ整備の工事も可能にしていく・・・という、事業の社会貢献度の高さを改めて実感しています。

世界中の課題解決に繋がっていく同社の技術進化が楽しみでなりません。

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