“銀行らしからぬ”デジタル武装とBizDevを加速させる。
株式会社福岡銀行(ふくおかフィナンシャルグループ)
ビジネス開発部 部長 東 慶太
1995年、慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社福岡銀行に入行。
経営企画部門にてグループの経営戦略、営業企画部門にて新たな金融サービスの企画業務に従事したのち、2020年より現職。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
入行して20数年、今も変わらぬスタンス。
まず私のキャリアを振り返りますと、大学の経済学部を卒業後、実家が自営業をしていたこともあって、「企業を支援する仕事をしたい」という思いから金融機関を志向し、福岡銀行に入行しました。入行後は営業店を2つ経験したあと別会社に出向し、ロンドンに駐在しました。帰任後は総合企画部に所属し、以来、ずっと企画畑を歩んでいます。
総合企画部ではALM(Asset Liability Management)という資産と負債のバランスを管理する業務、熊本ファミリー銀行(現熊本銀行)・親和銀行(現十八親和銀行)との経営統合に関する業務、中期経営計画の策定などに携わりました。
そこから営業企画部に異動し、新しい商品やサービスをつくるというミッションの中で、デジタル化やFinTechの流れを受けてセクションを切り出し、現在はビジネス開発部として新規ビジネスの創出や既存業務の効率化などを進めています。
入行して20数年、いろんな環境で、いろんなミッションを持って仕事をしてきましたが、私の考え方や取り組みのスタンスとしては、会社目線では「いかに収益をもたらすか」「営業店が働きやすいか」、お客様目線では「いかにお客様の課題が解決できるか、喜んでくれるか」「それを実現する商品やサービス、ビジネスをつくっていけるか」という部分はずっと変わっていないことだと思います。
最近ではそこに「テクノロジー」を掛け合わせながら、いかに競争力を高めていけるかという部分に注力しています。
グループ全体を巻き込みながら、新しいことにチャレンジする。
スタンスは変わらないと申しましたが、変化していることもあります。それは「やり方」で、大きく2つあります。
1つは、新しいことへのチャレンジです。特にこの1~2年はデジタル化やDXを進める中で、できるだけ多くのアイデアを出しながら、まずはスモールスタートで形にする。そしてお客様に届けて価値を感じてもらいながら、さらに良いものにするというサイクルを回してきました。
そして今取り組んでいるのが2つ目で、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)全体を巻き込んでいくということです。
私たちビジネス開発部が新しいことにチャレンジする一方で、本部の他セクションや営業店との間にギャップや温度差を感じる場面が出てくるようにもなりました。思いの濃淡はあれど、「FFG全体で新しいことにチャレンジするんだ」という方が、何倍も効果が発揮できるのではないかという考えが強くあります。
これまで長い歴史の中で積み上げてきた既存のコアビジネスを、新しい形で提供したり、新しい価値を加えて提供するために、グループ全体が一体となって変えていくという動きがとても重要なのではないかと思っています。
人の強みを発揮するためのデジタルを前提とした営業スタイル。
ふくおかフィナンシャルグループにおける新たなチャレンジの象徴として、よくスポットが当たっているのが、デジタルバンク『みんなの銀行』です。現在150名ぐらいの体制で、言ってしまえば「大組織のしがらみ」を受けることなくどんどん前に進めるので、一つのやり方としてすごく新しいチャレンジの仕方です。
一方、福岡銀行・熊本銀行・十八親和銀行に目を転じると、行員が8,000名ぐらいいますが、多くの行員が従来の、言わば古いシステムや業務プロセスの中で業務を進めています。それらを一気に変革するのは難しく、また、失敗も許されない中でどう変革させていくかというのは、こちらも大きなチャレンジです。
『みんなの銀行』としてのチャレンジと、3つの銀行のチャレンジの仕方はだいぶ違いますが、いずれも大きな可能性があると感じています。
また、銀行としての機能である「金融仲介」「信用創造」「決済機能」に加えて、私たちがそこに何をアドオンできるかというと、やはり対面の強さ、人の強さだと思います。
細かな取引データを収集したり、データを分析したりすることで新たな価値を生み出すというデジタルの強みを最大限に追求しながらも、情報の質、例えば、営業店のメンバーがお客様から得る「100坪くらいの土地が遊休地になって困っている」というような、「すぐ価値になる」情報をいかに多く集められるかを大切にしています。
お客様の機微を感じ取ったり、後押ししたり、そういった部分は今のところ圧倒的に「人」に分があります。人がそこに時間や力を費やせるように、面倒な手続きをデジタル化したり、お客様と対面したときに密度の濃い会話ができるようにデジタルチャネルやツールをうまく活用していく。そうした「人の強みを発揮するためのデジタル武装」を進めることで、競争力を高めていきたいと考えています。
チャレンジ、トライ&エラーを後押しするための仕組みづくり。
それから、人が強みを発揮するための組織体制や人事制度も変革途上です。ビジネス開発部では大きく「ビジネス」「データ」「アジャイル(システム開発)」とチームを分けていますが、さらにプロダクトごとにチームを横断させるなどして、「個からチームへ」の強化や「チームの連携」に注力しています。
また従来の総合職といった職域だけでなく、デジタル専門職コースといったものも用意しています。既存メンバー、あるいはこれから入行される方が、よりいろいろな取り組みにトライできるような仕組みづくりを進めているのも、私たちにとってチャレンジの一つです。
例えばスタートアップから転職した方が「スピード感の遅さ」や「組織のしがらみ」を感じてしまっては、きっとパフォーマンスを発揮できないと思います。あるいは経営志向や上昇志向のある方が「ガラスの天井」を感じてしまっては、長く続けることはできないと思います。
そうした目に見えない違和感や古いカルチャーをできるだけ排除できるように、これからも制度面からアプローチを続けていきます。
ミスを恐れていては、ビジネスデベロップメントはできない。
銀行は世間一般では「減点主義」と言われることが少なくありません。ただ、今は変わりつつあって、これからもっと変えていきたいと思っています。
私たちが注力している新たなビジネスの創造や、未知の領域に足を踏み入れる過程において、ミスを恐れていては、何も生まれません。たとえ営業店メンバーであっても、ビジネス開発部のITエンジニアであっても、「お客様に喜んでいただけるサービスをつくるんだ」「世の中にない新しいビジネスをつくるんだ」という意欲、そして意欲を原動力とする実践を大切にしてもらいたいと思っています。
「これだけミスしちゃったけど、その分、これだけトライして、これだけ気付きが増えました」というような、ともするとこれまで銀行内ではあまり交わされることのなかった会話があちこちで生まれることを目指しています。
そして、金融業界をも超えて、ビジネスクリエイターのような人たちが思い切りBizDev(Business Development)できる場、自らの力を試す場として福岡銀行を選んでくれるような状態をつくっていきたいですね。
ITエンジニア、マーケター、ビジネスプロデューサー。異業界出身者が主要戦力に。
採用という面では、直近を振り返ると、ITエンジニアやデータサイエンティストなど技術的スキルを持つ方を多く採用してきましたが、デジタル武装強化という意味ではやはり大きな戦力ですので、今後も採用を続けていきたいと考えています。
加えて、プロジェクトマネージャーやプロダクトマネージャーといった推進力を持つ方、リーダーシップを持つ方も採用強化していきたいですね。
また、ビジネスが多様化する中でBizDevを進めるという意味では、バックグラウンドも金融業界に限定していません。実際に様々な業界でキャリアを積んだ方が主要ポジションで活躍しています。
大きく変革のときを迎えている金融業界にチャンスを感じる方、その中で新しいビジネスに思い切りコミットしたいという気概を持つ方は、異業界経験者であっても引き続きどんどん迎え入れていきたいと考えています。