採用が経営を変えた瞬間

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「復興、環境、観光」で
人とつながる100年企業へ。

株式会社陣中
代表取締役 福山 良爾

宮城 更新日:2021年6月23日

2001年、(株)サントレーディング設立。2003年、商号を(株)陣中に変更し、牛タン加工品販売を主力に。2008年、現在地(仙台市宮城野区)へ本社移転。2009年、仙台空港内に牛タンレストランをオープン。2017年、閖上工場(名取市)を開設。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。

苦境を乗り越え、牛タンと共に歩んできた20年

2001年に会社を設立して20年が経ちます。その前の有限会社時代を含めると、40歳でこの仕事を始めて23年になります。厳しい時もありましたが、思い出すのは楽しいことばかりで、振り返ると一瞬の年月です。記憶に残っているのは、設立から5、6年目ころのBSE問題の発覚に伴う事業縮小を余儀なくされた時です。150人いた従業員を35人ほどに削減しました。全員と面談をして謝罪して、そして納得していただいたつもりですが、辛い出来事でした。とにかくその時期は、何もかもが停滞していました。行動が停滞すると頭の中も停滞してしまい、時間が非常に長く感じたものです。しかし昔からの教えで、「長たる者笑顔をなくすな、生活を変えるな」と心に刻んでいたので、どんなに辛くても、その教えを守って生活していました。BSEよりもダメージがあったのは、中国製餃子中毒事件です。当社は商品製造を依頼している工場が中国にありました。風評被害は凄まじく、中国で製造された食品は信用できないという理由で、商品を売り場からすべて撤去しなければならない事態へ。そしてさらに東日本大震災がありました。さらに今回のコロナ禍によるダメージ。いろいろな経験を乗り越えてきましたが、今回が最大の困難期かもしれません。

時代の動きを先読みしたテイクアウト販売が好調

コロナ禍から1年経過した決算期。これまで経験してきた苦難を一度にすべて合わせたような状況でしたが、なんとか黒字の結果でした。地元の食品業界や銀行からは驚きの声があがったほどです。業績好調の理由は、コロナの影響を予測していちはやく対策を講じたからだと思います。ネット販売やテイクアウト販売を強化し、製造部では製造原価を見直しました。作り方や製造現場のスキルアップも図りました。テイクアウトの売上げを支えているのが、人気商品の牛タン弁当です。実はコロナの1年前から大ヒットしていて、3店舗ある直売店では、各店舗で1000円の弁当が1日で1000個売れることもあります。それも1日7時間営業で、です。同業者にとっては驚異的な数字だと聞いています。それを成し得ているのは、ひとえに技術力です。試行錯誤して確立させた一連の製造技術が、それを可能にしています。普通の弁当で1000円という単価は、決して安くはありませんが、牛タン弁当となると、「コスパがいい」ということになります。ローコスト実現の要因の一つは、牛タンに限定し、種類を厳選しているからです。21年1月にオープンした、テイクアウト専門店でも、順調に売上げを伸ばし、120~130%比で推移しています。

まだ1歩目の途中。原動力は、笑顔で楽しむこと

厳しい状況の中で順調に業績を伸ばしていることから、「成功の秘訣はなんでしょうか」と、問われることがよくあります。しかしながら、まだぜんぜん成功していないのです。やっと1歩目を踏み出したくらいの感覚です。自分が納得できるレベルまでいったときに初めて、やっと1歩目が終了でしょう。そこまでが私の役目です。その後の2歩目、3歩目は、後継者に任せます。成功という概念はありませんが、「原動力は」と、問われると「楽しいから」と答えます。楽しむことが私の原点であり、原動力になっています。

しかしこんな考えになったのは、最近のことです。10年前の自分は、まったく違っていました。年商が8億円になるまで、ほぼ一人で営業をしていて、年間10万キロの走行距離を走るなど、ただ無我夢中で動いていました。その時を知っている人からは、「別人ですね」と言われます。会社の成長とともに自分も成長しているのかもしれません。上場を視野に入れて準備を進めていた当時、BSE問題が起きて売上げは4億円まで落ち込み、借金が増えていきました。そんなときでも、笑顔を忘れないようにしていました。苦しい時こそ、笑顔が大切です。苦しい時に苦しい顔をしていたら、どんどん苦しくなるからです。失敗もたくさんしましたが、あとから考えると楽しかったとさえ思います。それは社員に対しても伝えたいことです。よかれと思っての失敗は仕方がありません。責任をとって会社を辞めるようなこともしてほしくはありません。失敗した以上に会社に貢献し、笑顔で働き続けてほしいと願っています。

復興、環境、観光を軸に、新しい展開を構想中

陣中は、お客様、仲間、会社、地域社会の4者に「喜んでいただくコト・必要とされるコト・笑顔でいるコト・感謝するコト」の「仕事(4ゴト)」を実践し、挑戦しています。そして今後の事業テーマは、復興、環境、観光の3本軸。環境については、できることから取り組んでいこうと、パッケージを脱プラスチックに変更しました。復興に関しては、東日本大震災の被災地に6000坪の工場建設の計画を進めています。名取市の緊急避難場所に指定されるように大震災の津波の高さ以上の床高を確保し、安心・安全な環境で働けるようにします。また高齢者や障がい者が働ける場所も設置しようと考えています。名取市をはじめ、東北を代表する観光スポットとなるような楽しい仕組みや、子どもの食育の場にもなるようにと構想を練っているところです。

実は、牛タン事業に加えて新事業にも挑戦しています。「和肉」というジャンルです。これは私が2年かけて商標登録したもので、条件をクリアした牛肉、豚肉、羊肉、鳥肉の総称のようなもの。この「和肉」をブランド化し、もう一つの事業軸にしていこうと考えています。食品の自家消費が増加する中で、土産や外食ではなく、毎日の生活に入り込んでいける食材になると思います。どんな食材・商品も判断するのはお客様。手間暇かけて、これまで培ってきた独自の技術力で、お客様の心に響くものを作り上げていきます。

継続可能な会社風土を作り上げて、人とつながる100年企業へ

人生を振り返ると、転機のタイミングには必ず人との出会いがありました。偶然の出会いもあれば、磁石のように引き付け合う関係もありました。その出会いの中で成長し、チャンスをいただき、今日に至っています。これまで事業に携わってきて強く思うことは、「スタッフを大事にする」という、人への思いです。これは徹底的に実践しなければなりません。人は十人十色で違う考え方を持っています。多少似ていると思っても、すべて同じということはありません。会社の上層部はそのことを理解した上で、会社の理念や目標をきちんと分かりやすく伝える役割があります。あくまでも会社とスタッフのジョイント役であり、押し付けるものではありません。時間はかかりますが、一人ひとりへの丁寧な対応が必要で、部署間、スタッフ間で助け合い、ワンチームで仕事に向き合える環境づくりのための、大切なコミュニケーションを活性化させる役割が求められます。いつか私も引退します。守ってほしいのは一つだけです。それは、「仕事(4ゴト)」。これだけは100年経っても残してほしい。会社が継続できるような仕組みや会社風土を作り上げ、陣中の仕事に関わる皆さんが楽しみながら利益を得るような会社であり続けたいと思います。2歩目、3歩目を担う後継者に、この思いと夢を託します。
インタビューを通して強く感じたのは、同社は「開発力」の会社だということです。牛タンを扱った商品群の開発力はもちろん、サービスや品質など、全ての視線がお客様に向いており、期待を超えるために柔軟に変化し、様々な要素をゼロから開発していく。そういった文化が根付いている企業と感じました。現在着想されている新工場においても、単なる食品製造工場の位置づけではなく、複合的に色々なアイディアが詰まっていると伺っており、お話されている時の福山社長の楽しそうな表情が非常に印象に残っています。同社の、加速的な成長を予感させるインタビューになりました。

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