自動ドアの付加価値を創造し、商品開発力を高める。
フルテック株式会社
代表取締役社長 古野 重幸
1958年生まれ。岩見沢東高校、早稲田大学政治経済学部を卒業後、トヨタ自動車工業に入社。1988年に父親が経営する東日本寺岡オートドア(現フルテック)へ入社し、32歳となる1990年10月に二代目社長に就任。2018年3月22日、東京証券取引所市場第一部銘柄に指定。
※所属・役職等は取材時点のものです。
先代から引き継いだ会社。社名変更とM&Aを重ね、東証一部へ。
当社は1963年、寺岡オートドア製の自動ドアを販売する代理店「北海道寺岡オートドア(株)」として、先代の社長である私の父が創業した会社です。2015年7月には、現在の「フルテック(株)」へ社名を変更しました。すでに自動ドアだけではなく、ステンレス建具・分煙システムなどを製造・販売し、多角的に事業を展開していたので「自動ドア」を印象づける社名に違和感があったからです。その後、2017年3月22日東京証券取引所市場第二部に上場、翌年同日第一部銘柄に指定されました。
父親の急逝により32歳で社長に就任しましたが、ワンマン経営だった父から受け継いだ当時の社内事情は、問題が山積していました。しかし『社員を信頼しよう!』という信念で、問題に向き合い、一つ一つ乗り越え、解決することができました。
まさに「人の心は自分の鏡」です。自省の心を持ち、私心を捨てて相手の立場に立つことが大切であると気付きました。「人を信頼し、社員の力を信じる」が難局のなかで学んだ「経営の原点」です。
守り抜いて継続させた経営の理念と信念。
根底となる考えは経営理念である「豊かになるための集団」「負けてたまるかの拡大発展」「顧客に密着する経営」「新製品新事業の開拓」「会社は永続するもの」にあります。
筆頭である「豊かになるための集団」には「働くことを通じて、よりよい収入を得る場にしよう。そして人間性を高めよう」「明るく楽しい職場にしよう」という意味が込められています。仕事は単なる収入を得るばかりではなく、自己修練の場であり、人間性を磨く場にしようというものです。会社は物心両面の豊かさを追求する場であり続けたいと思います。
新規・既存顧客への徹底したアプローチによる堅実な成長戦略。
当社は、北海道から自動ドア事業をスタートさせて東北へとシェアを拡大してきました。北海道エリアのシェアは約60%、東北エリアは約50%と、市場占有率において北海道・東北地区ではナンバー1を誇ってます。
その後M&Aを重ね、2001年には関東圏にも本格進出を開始していますが、関東でのシェアは未だ15%にすぎません。2020年までは首都圏エリアでのシェアアップを強化し、その後は西日本へ、そして全国へと展開してくことも視野に入れています。
また、新規施工現場の獲得と並行して、過去に施工した現場のリニューアル提案にも注力しています。当社が過去施工し、管理している約26万台の自動ドアに対してメンテナンス・リニューアルの提案をすることで、既存の顧客基盤を活かした安定した収益の向上を図ることができます。既にメンテナンス・リニューアルの売上は全体の約50%強を占める重要なセグメントになっています。
また一方で、商品開発力を高め、サッシ・ガラスなどの建具の設計製造を始めとした自社製品の開発も強化しています。メンテナンスと並行して自社製品の提案も行うことで付加価値の増大を図り、現在、建具関連ビジネスは売上の約30%弱まで拡大しました。
こうした新規エリアへの事業拡大、過去施工現場へのリニューアル需要の掘り起こしの2つの軸が、当社の成長の鍵になると考えています。
自動ドアに新たな付加価値を提案するなど、プラスαの成長軸を創出。
私たちはIoTを活用することで、自動ドアに、これまでにない新たな付加価値を提案し、プラスαとなる成長軸を構築したいと考えています。たとえば、ローコストで効率的なメンテナンス体制を構築したり、自動ドアを出入りする人を正確にカウントしデータベースに蓄積、そのデータを分析してお客様の要望する情報を提供するサービスなどを想定しています。
また、当社の強みは、営業から設計・製造・施工・保守サービスまで、正社員での社内一貫体制を整えていることです。付加価値を高める商品開発や、リニューアル需要の掘り起こしも、この一貫体制があればこそ確立できました。これらの業務はオートメーション化が困難ですから、今後の事業拡大には人材確保・育成が重要な課題となりますが、私は採用するにあたり「まじめで頑張り屋」であれば学歴などにはこだわりはありません。
事実、私も何も知らない32歳で社長に就任したわけですから、成長することの可能性に期待しています。次代を担う若手人材を採用し、計画的に育成していきたい。それによって「人材の厚み」のある会社にしていきたいですね。
正直なところ、派手さのない地味な会社ですが、これからはM&Aや商品開発の知識は勿論、IoTやAIなどの実践的なIT知識も必要です。「マネジメントに携わりたい」「電子工学の基礎知識を活かしたい」など、ぜひ当社で得意な分野に挑戦してください。