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リサーチで培ってきた発想力で、ITの新たな可能性を引き出す。

株式会社インテージテクノスフィア
代表取締役社長 須川 壮己

長野 更新日:2017年4月26日

1957年生まれ、大阪府出身。京都大学工学部卒業後三井物産株式会社に入社。その後、株式会社ジェイエスキューブ・サービス代表取締役社長等を経て、2013年、株式会社インテージ(現:インテージホールディングス)に入社。理事を経て、2014年4月、株式会社インテージテクノスフィアの設立に伴い代表取締役社長に就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

ITを再び成長させるという命題の下でのスタート。

インテージテクノスフィアは2014年に、インテージのテクノロジー本部が独立し、インテージ長野と事業統合して誕生した会社です。市場調査会社として知られているインテージは60年ほどの歴史がありますが、実はコンピュータ業界から見てもかなりの老舗です。

市場調査をする上で、何千人もの方からのレポートやアンケートを処理するため、発足2、3年目にはIBMの大型コンピュータを購入しています。大手企業でもほとんどコンピュータを持っていない時代に、IBM1401というマシンを日本で10番目ぐらいに導入し、その後のIBM360という有名マシンに至っては国内で3番目に入れています。常に周囲が驚くようなことをやってきた歴史を持っている会社です。

しかし、市場調査部門の成長が著しかったために、ITビジネスに関してはきちんとした成長戦略が描けていませんでした。ITの力が弱くなっていたなかで、再度ITに力をつけ、成長させるというインテージホールディングスの宮首賢治社長のメッセージのもと、独立したのが当社です。

守りから攻めに切り替え、発足から増収、増益で来ています。IT業界の好景気のタイミングだったことも要因ですが、背景にはリサーチで培ってきた仕組みがベースにあると思っています。

長野で手掛ける商品マスタが市場の未来を動かしていく。

当社は東京本社と長野とで分業する体制で仕事に取り組んでいます。長野における柱は商品マスタで、これは商品の売れ行きに関するあらゆるデータと捉えていただいていいかと思います。

例えば炭酸飲料の場合、商品名や価格のほか、パッケージに書いてある微炭酸、爽やかグレープフルーツ味といったマーケティング文句も全てデータ化しています。それによって「微炭酸で無糖のものってあるの?その中で一番何が売れているの?」「赤っぽいパッケージで一番売れている銘柄は?」といった、お客様が本当に欲しがる情報を提供することができます。メーカーが販売データを持っていたとしても、このような細かい比較は簡単にはできません。

一方で、お客様には新商品開発の際に過去のデータを積極的に活用していこうという流れがあり、そこで、インテージが持っている情報を使おう、と思っていただけています。以前、ある証券アナリストが「インテージグループの価値は商品マスタである」と表現したことがありますが、それくらいの強みだと考えています。

そのほか、旅行代理店が各旅館に支払う料金確認などの精算代行、BPOと呼ばれる事務処理受託なども柱となっています。もちろん開発も手掛けています。膨大なデータ量を扱う市場調査のデータ処理と相性が良い機械学習や人工知能の研究開発も進んでいて、今後は市場調査以外への応用へと発展させていく計画です。

ITを使った新しいサービスを発想できる風土を持つ会社。

IT業界において、合理化のためにコンピュータを使う時代は終わり、いまは「ITがあるからこそできる新しいサービスの提供」という方向に向かっています。IT会社の経営者の方は皆、「とにかく提案型に切り替えないと生きる術がない」と悩んでおられます。なかなか実現出来ないのは、指示を受けて作るというこれまでのやり方に慣れ過ぎているからです。当社の場合はリサーチを手掛けてきたことで、常に「他社とどう差別化するか」「代わりの案はないか」と考え、工夫する文化が育っています。

例えば、リサーチで使っているデータベースが市場にあるものでは遅くて使えないので自前で作っています。データベースは使用目的に特化して作ろうと思えば作れるものではあります。しかし、作ろうという発想を持つIT会社は珍しいと思います。私はそれを、リサーチ分野の仕組みがテクノロジードライバになっていると表現しています。それでも、お客様から「言われたことだけやっていてもしょうがないでしょう」とおしかりを受けることもあります。社員には「そう言われた時には、とにかく考えろ。お客様に絶対、そんな言葉を言わせるな」と話しています。

提案力を持つ人材の存在が、他社との差別化になる。

いま、我々が求めたいのはITセンスとビジネス理解を持った人材です。提案型の仕事というのは、まずお客様に寄り添わなければいけません。寄り添うとは、お客様の仕事を理解すること。例えば今回のように取材記事を書く会社に対しては、コンピュータ屋が「何か御用はありませんか」と来るよりも、「ここにITを使うと編集時間が半分になりますよ」とか「機械学習を使えば、写真整理が自動的にできますよ」と言ってくれる方がうれしいじゃないですか。それは、お客様の仕事を理解していなければ言えない訳です。

新しいIT技術を開発していくことも大事なのですが、今後重要なのはその使い方を発想すること。私自身は三井物産での会社員時代、常に新しい事業に取り組んでいたこともあり、新しい技術があると「これは何に使えるかな」とすぐに考えるくせがついています。

お客様の困りごとを探り出し、その解決方法を考え出せる人材を育てることが、すなわち他のIT会社との差別化だと思いますし、極端に言えば、細かい技術は分かっていなくても、「ITでこんなことできるよね」と発想できる人を求めています。そういう人材がいれば、お客様も我々もレベルが上がっていくだろうと感じています。

技術面でも一歩先へ。さらなる進化を目指して。

我々は100億円規模のIT会社としては珍しく、99%が元請けです。元請けの良いところは提案できること。その点では、発展できる余地が大きい方だと思います。人材についても、元請けの仕事をしっかりやり切れる人が揃っています。分析のプロフェッショナルであるデータサイエンティストの社員を連れてお客様のところへ行って話をすると、お客様に「そんなこともできるの?」と驚かれるのですが、そういうシーンを見ていると、この仕事はITの可能性を広げるし、IT業界の一端を担う者として、こういうメンバーと提案型の仕事をするということは、すごく世の中のためになっているのだなと思います。

いまは期待を超える提案をしていくことが求められていて、それは理想論のように思えますが、すでに出来ているIT会社もあるし、当社もそれが出来るように努力を続けています。最近は社員を欧米の展示会に派遣して、とにかくITの使い方の最先端を見せています。日本はアメリカと比べるとやはりITの活用の仕方が遅れている。そこに気づき、吸収したものを、反映していってほしいと思っています。

今後は現在提供している仕組みをプラットフォーム提供へと横展開していくことを目指しながら、来季からはもう一歩、技術の先を走る難しいことをやろうとしています。長野にいながら、目の前に広がる世界はとても大きいです。ITのハイテクをやりたかったら、ぜひ当社へ来てほしい。それは自信を持って言えます。

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