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金融事業における唯一の差は人材。ゆえに銀行の最大の財産は人材。

株式会社北海道銀行
頭取 笹原 晶博

北海道 更新日:2016年12月22日

1957年2月21日生まれ
札幌市出身。北海道大学教育学部卒業。
1979年、北海道銀行に入行。1996年、営業推進部営業企画室室長。
2003年、執行役員(営業企画担当)。2005年、取締役執行役員常務(営業部門長)。
2010年、代表取締役副頭取、株式会社ほくほくフィナンシャルグループ取締役。
2012年、株式会社道銀地域総合研究所代表取締役社長。
2015年、代表取締役頭取、株式会社ほくほくフィナンシャルグループ代表取締役副社長。
※所属・役職等は取材時点のものです。

地方創生元年。

アベノミクスの新しいテーマとして「地方を元気に」と言われるようになりました。昨年がまさに”地方創生元年”だったと思います。そして私は同じく昨年、頭取に就任しました。

アベノミクスで言うところの「地方が抱える課題」とは、まさに当行が意識する課題でもあります。今や3大都市圏を除くどの地方も「人口減少」と「高齢化」という悩みを抱えていますが、北海道においても、札幌以外の地域の地盤沈下は顕著です。しかし、私たちはそこに根を張って活動している以上、そうした課題に対して、預金、融資、為替という銀行の三大業務にとどまらない、新たな役割を果たすべきだと考えています。それは、「地域や企業の役に立つ」という役割です。

昨年、地方の自治体がどういう成長戦略を描くかのプランニングが行われたのですが、そこに当行と、当行のグループ会社である道銀地域総合研究所でアプローチをしました。その結果、道内60以上の自治体の戦略策定に参加することができました。今年はいよいよ、各自治体がそれを実行に移す年です。

すべての自治体に、ユニークな産品や魅力ある観光資源があるわけではありません。また、自治体だけが動いても、プランの実現はできません。最も大切なのは、民間企業と、そこに住む人々の力です。銀行は直接産業を作りだすことはできませんが、地域の企業や人に主体的に動いてもらえるよう、その動機付けをし、サポートする立場になることはできます。

地域が衰退していくさまを黙って見ているわけにはいきません。地域とともに人口減少と戦っていく覚悟で、銀行としてあらゆる資源を投入していきます。

理念は「地域共栄」「公正堅実」「進取創造」。

当行は昭和26年3月に創業しました。前年の昭和25年8月、全道の商工者の大会が旭川で開かれ、そこで”新しい銀行を作るべし”という採決がされました。その声を受け、採択からわずか半年後に当行が誕生したのです。

もともと官製銀行として北海道拓殖銀行はありましたが、それ以外の民間銀行が無かったため、新銀行の需要は凄まじく、創業の年に全道に38店舗を展開するに至りました。当行は、道民の方が声を上げ、道民の方が出資してできた“道民の手作り”の銀行。だからこそ、私たちの存在意義は、当時も今も道内の民間企業に潤沢に資金を供給し、理念である「地域共栄」を担うことにあります。これは当行が創業から現在まで持っている理念です。

創業当時、人口は増加し、地域は活性化していく時代でしたが、今はその逆回転が起こっています。人口は減少し、地域の経済力は落ちていく。この逆回転に対し、ともに戦っていくことが、今までお世話になった地域への恩返しにもなり、それこそが現代の「地域共栄」になります。「公正堅実」とは信用を旨とする金融機関として当然のことで、文字通りです。

もう1つの理念、当行の特徴である「進取創造」は、創造と革新を追求し、活力ある職場から魅力あるサービスを提供する、という意味です。他の地銀の多くが創業100年を超えるなかで、創業60年超の当行は若いほうです。当行はバイタリティあふれる若い銀行として、何事にも積極的に取り組み、何事もフラットに考える文化を持っています。今、厳しい局面だからこそ「進取創造」を旨とし、自らの姿をも変えていかなければならないと思っています。

「実質主義」というDNA。

以前から、積極的に経験者採用は行っており、異業種からも採用をしています。金融系出身者に限らずマーケティングの経験者や、リタイヤした専門性を持った人材など、いろいろな人材が入行していることが、当行の良いところだと思っています。

当行には「実質主義」という考え方があります。例えば、人事発令は特別な書面もなく、儀式も行いません。職員間の年賀状のやり取りや付け届けのような虚礼はしませんし、また職員には高卒、短大卒、大卒、大学院卒などさまざまな学歴の者がいますが、学歴を根拠に差がつくことはなく、学閥で人が集まるような文化もありません。いろいろなキャリアを持ち、いろいろな才能を持った人が集まっている、フランクな組織風土が当行の強みでもあります。

人の品質の高さこそが、銀行の財産。

銀行における財産、それは人材です。銀行の業務は、サービスの内容に大きな違いがないため、他行との決定的な差異化は難しいのです。そうしたなかで、最大の差異化を実現できるのは「人材」です。「人材の品質=会社の品質」だと私は思っています。

具体的には、経営理念に「公正堅実」とある通り、当行の職員は誠実で、信用を旨とすることを大事にしたい。常に正直であり、いろいろなことを受け入れ、お客さまをはじめ関わる人すべてに対して誠実であること。それによって得られる信用こそが、何よりも大切です。人物像としては、誠実さがベースで、積極性がありオープンな性格であること、努力する人、それが当行が求める人材です。

銀行の仕事は多種多様で、さまざまな業種の方やいろいろな思いを持つ個人と接することができる、とても面白い仕事です。そこには対人能力、気づく力、高い感度が必要であり、多様性が求められます。これを『楽しい』と思って、日々成長の場と思って仕事をするか。それとも『仕事をさせられている』と思って過ごすか。仕事を面白いと感じることができるなら、毎日が成長の機会に恵まれた、素晴らしい日々になります。

また、日常の仕事の中に、北海道を代表する経営者に出会うようなチャンスもたくさんあります。これは、自分を高める機会に恵まれているということです。その経験の広がりが、自分自身だけでなく自身のネットワークの厚みとなり、ひいては個人として、銀行として、地域での役割を果たすことに繋がります。職員には、そうしたチャンスを日々与えられると思って、仕事に臨んで欲しいと考えています。

地域金融機関としての新たな挑戦。

当行は昨年、北海道総合商事株式会社という商社を作り、ロシアビジネスなどに取り組んでいます。北海道には、地場の小回りが利く商社機能がないので、その役割を持つ会社を設立したのです。当行は銀行法により出資の制限があり5%の出資にとどまりますが、その他道内企業が出資しており、道内企業の輸出、海外進出のお手伝いなどをしています。

また、北海道ベンチャーキャピタル株式会社と組んでファンドを組成し、40数社に最終的に約25億円となる投資を進めているところです。このような投資ファンドでは「10件投資して、2~3件の上場で回収できればよし」とするものですので、従来の「全額回収」という銀行の価値観とは全く異なる領域にもチャレンジしています。

このように、これまでの銀行には無かった新たな業種にも、活躍の場が広がっています。当然、これまでの銀行員とは異なる価値観を持つ人材が必要ですので、さまざまな業界から経験者を積極的に採用しています。

例えば商社出身の職員は、自治体のコンサルティングに入っています。シリコンバレーのインテルでマーケティングの仕事をしていた職員は、現在お客さまのマーケティングのコンサルをしています。トヨタ自動車の技術者出身の職員は、道内企業の工場効率化、業務改善のコンサルをしています。当行の採用では「この人にこんなことを任せたら面白いんじゃないか」という発想があれば、何でもありだと考えています。

北海道の可能性について

北海道の将来について考えたとき、観光と農業には大きな可能性を感じています。

観光については、北海道へのインバウンド来訪者は2015年には200万人に達し、5年前の60~70万人という数字から大幅に増加しました。これを2020年には500万人にすると見立てていますが、ここを私は疑問に思っています。数ではなく、付加価値で考えるべきではないか、と。

そのためには、質のいいサービスを受けるためにお金を払ってくれる人を、サービスの対象にするのです。そしてその対価として、堂々と適切な価格設定をしてもいいという意識を持ち、観光客個々人への満足感を上げるような観光サービスを提供していく。質よりも数を重視すると、観光は”通過型”になってしまい、地域の活性化につながらないと思うのです。「質を高める」サービスを創造することに、当行として何かお役に立てることはないか、模索しています。

農業に関しても、大いに可能性を感じています。私は今年3月にニュージーランドへ視察に行きました。ニュージーランドは北海道の約3倍の面積に420万人が暮らし、農作物を海外に輸出することで豊かな国になっています。一人当たりGDPは日本の1.2倍、経済成長率も年2%強です。北海道はこれを目指すべきではないでしょうか。

北海道は現状、”モノはいいけど”厳しい環境で勝つことを考えておらず、競争力が高いとはいえません。一方でニュージーランドは、国外へモノを売ることを前提に、海外の厳しい環境で勝つことを常に考えているのです。例えばコストダウン、品質や味のマーケティング、生産量を上げるための品種改良、そういった問題意識をより強く持って仕事をしていけば、北海道は農業でもっと稼げるはずです。

今、北海道のGDPは約18兆円。その経済規模の中で2兆円の資金流出、いわゆる貿易赤字があります。寒い土地で化石燃料を多く消費するのがその理由の一つで、出ていくものが多い。それに対し、農業の力は獲得外貨を増やすことにつながります。ニュージーランドの素晴らしい観光資源や、農業と結びついたワイナリーの光景は、まさに北海道の各地に重ねてみることができると思うのです。

編集後記

コンサルタント
高岡 幸生

「地域とともに人口減少と戦う」「地域の経済が落ちていく逆回転と戦う」などインタビューの端々に笹原頭取の「闘魂」を感じました。弊社は2016年3月末に北海道銀行さんと提携させていただきましたが、同社の意思決定の速さに驚いたことを記憶しています。

地方創生というキーワードはもともと地域と共存する地方銀行のための言葉です。改めて地方銀行がその使命を強烈に意識する時代が来ていることを、笹原頭取の意志の篭った言葉から感じ入った次第です。加えて、人材に対する並々ならぬ期待感も強烈に感じました。やりがいを求めて行くなら今こそ地方銀行、と思いました。

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